安倍晋三前首相は、アベノミクスの成果として雇用情勢の改善を挙げることが多かった。しかし、森田京平・クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストは、雇用情勢の改善は人口動態の変化によってもたらされたものであり、アベノミクスの施策によるものではないと分析する。特集『アベノミクス 継承に値するのか』の最終回となる#12では、森田氏にその理由を聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
失業率も有効求人倍率も
改善が始まったのは旧民主党政権時
――安倍晋三前首相は、アベノミクスの成果として雇用の改善をたびたび挙げていました。
雇用の改善はアベノミクスの成果というよりも、人口動態、人口の年齢構成の変化という要因が大きい。完全失業率の低下にしても有効求人倍率の上昇にしても、始まったのは旧民主党政権の初期だ。安倍政権下ではそのトレンドが維持されたにすぎない。
いわゆる残業を示す所定外労働時間と、新規求人数が増加に転じたのも旧民主党政権の初期。所定外労働時間については、安倍政権になって働き方改革の名の下に抑制された。人手不足が顕在化したときに労働時間を抑制したので一層、人手不足感が強まった。