アベノミクス#7
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アベノミクスの最大の功績は雇用を増やしたことだと喧伝されている。確かに失業率や有効求人倍率は大幅に改善した。だが一方でこの間に実質賃金は下がり続けた。特集『アベノミクス 継承に値するのか』の#7では、「最大の成果」とされる「雇用増」の中身を検証した。見えてきたのは、日本経済に巨大な不安定労働市場がビルトインされ、賃金が上がりにくくなっている中で、異次元金融緩和などの物価を上げようとした政策が働き手にはむしろマイナスの影響を及ぼした実態だ。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

「400万人超の雇用増」は
アベノミクスの功績か

「400万人を超える(新たな)雇用をつくり出し、働き方改革や一億総活躍社会に向けて大きく一歩踏み出すことができた」。8月末の辞任表明の記者会見で安倍晋三前首相はアベノミクスの下での雇用増の実績を強調した。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する前まで、2014年から有効求人倍率は1倍を超え、20年1月では1.49。政権発足時に4.3%だった失業率も18年以降は2%台半ばの低水準を維持してきた。政権発足直後の13年1月からコロナ感染が拡大する直前の20年2月の間に雇用者数は475万人増えた。

 多くの人が働くことを通じて所得を得て生活している中で雇用の機会が増えたことは意味がある。

増えた半分は非正規雇用者
実質賃金低下の要因に

 だがその中身を見ると、増えた雇用者数475万人の53%に当たる249万人は派遣社員やパートといった非正規雇用者だった。12年1月から20年1月に増加した雇用者数では、その割合は66%に及ぶ。

 また、労働人口が減る中で失業率が下がり求人倍率が上がるのは自然のことだが、求人倍率が上がったのは介護と物流、建設の3業種にほぼ限られる。