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現在の売上本数は前作の8分の1程度
「ドラクエX」のオンライン化は失敗だったのか?

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第34回】 2012年9月20日
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 さすがに国民的ゲームとはいえ、続編(いわゆるナンバリングタイトル)でなかった場合は、事実上「外伝」扱いとなり、社会的な注目がかなり落ちる(筆者も、外伝だったら遊んでいなかった可能性が高い)。そうなると、パッケージの販売数は今よりずっと少なくなったはずで、前作ドラクエ9より早く開発を開始していたことで膨らんでいるドラクエXの開発費を回収するのはかなり難しくなっただろう。したがって、従来のファンの反発は理解しつつも、ナンバリング化は不可欠であったのではないか。

二階建て収益構造モデルの採用が、
正解である理由

 また、ドラクエのブランドイメージを考えると、「収益性を高めるためにアイテム課金」という手法は絶対採れない。ソーシャルゲームのコンプガチャ騒動時にディレクターもいち早く「ドラクエではそういった手法を採らない」と言っていたし、ここはやはりドラクエが持つポジティブなブランドイメージを最大限に生かした「パッケージソフト売上」と「オンライン月額定額課金」の二階建て収益構造モデルの採用が正解だ。

 インターネット以前は、ユーザーからゲーム会社へのお金の流れは、1)パッケージ料金(家庭用ゲーム)、2)1プレイごとの支払(アーケードゲーム)の2種類しかなかった。だが、パッケージソフトのいわゆる“割れ”(ネット上にアップロードされている著作権違反ソフトデータをダウンロードする、著作権者にお金を払わない手法)による収益低下を解決する意味でも、ソフトメーカーは「ユーザーに納得して気持ちよくお金をたくさん払ってもらうにはどうすればいいのか」という問いへの不断の努力が求められる。それは言い換えれば、ビジネスモデルはコンプガチャに限らず、新しいものがいくらでも開発される、ということだ。

 ユーザーは、「パッケージ発売(もしくはサービス開始)後に、ゲーム会社が新しくかけた手間」に対しては、料金を支払うことをあまり嫌がらない傾向がある。その意味では、「ネット上にサーバを設置し、いろいろな人が交流できるサービスを提供する。そのための料金として月額1000円をいただく」というシステムはユーザーが納得できる理屈である。

 もう1つ、ユーザーの納得が得られる方法としては、「それなりのボリュームがある追加シナリオやキャラクターの衣装などを新規で開発する」というものがある。逆に、「既にゲームディスク内に入っているシナリオデータに対してかかっているロックを、有料で解除する」という、小出しに料金を要求する方法は、かなり嫌われる。

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小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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