著名人の自殺に後追い効果があると言われる中、三浦さんの共演者をはじめ、著名人の中でも自殺が連鎖しているように見えることは、ただの偶然なのか、仲間の死に心理的に影響を受けた後追い自殺や模倣自殺なのかは、現段階では知る由もない。しかし、これらの情報を受け止める側である視聴者や読者は、否応なく連鎖自殺を連想してしまう状況にある。
著名人「連鎖自殺」の深い影響
自殺報道のあり方とは
では、一般人を報道の影響から守るための取り組みは進んでいるのか。厚生労働省は「著名人の自殺に関する報道は『子どもや若者の自殺を誘発する可能性』があるため、WHOの『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道の徹底をお願いします」などのお願いを、三度出している。独自の「ガイドライン」を作成している報道機関もあり、朝日新聞は自社のガイドラインを公開している。
事件や自殺の報道は警察担当記者が中心に行うが、公式発表以外の情報を入手し、記事化するのも報道の役割である。どこまで報道するのかについて一定のガイドラインはあってもいいが、杓子定規に捉えると何も報道できなくなる。ただ、一般紙やテレビは、社内ガイドラインに従って、ケースバイケースで判断すべきだと筆者は思う。一方で、雑誌やスポーツ紙、夕刊紙は、一般紙やテレビとは違った独自の報道をするものだ。著名人の自殺に関しても同じことが言える。
ただし最近は、ネット上のポータルサイトであらゆるニュースが拡散されるため、媒体の垣根がなくなりつつある。独自スタイルの報道を続ける媒体の記事については検索上位に上がらない仕組みにしたり、ガイドラインに明らかに反する内容の記事については本文を載せないようにしたりと、ポータルサイト側にも工夫が必要だ。著名人の自殺が起きたときに、専門家などを臨時に召集して意見を聞き、判断するのもよいかもしれない。
さて、ここまでは主に著名人の自殺報道が世間に与える影響を見てきたが、それは自殺の誘発要因の1つに過ぎない可能性がある。自殺を考えるほど人が悩む根底には、コロナ禍による先の見えない社会不安など、さらに奥深い原因があるはずだ。各種機関のデータと共に、そのあたりの事情も考察してみよう。