土屋 「カニバリ製品発見ツール」というものもあります。うちの製品は種類がやたら多いので、カニバリ(自社の製品が自社の他の製品を侵食してしまう「共食い」現象)のことが多いのです。
入山 私もワークマンでシャツを買うとき、どれにしようか迷ったくらいです。
土屋 このツールは、製品番号を入れると、カニバリ率が高い製品から出てきます。
入山 社員全員で使っているからこそ組織内の知恵が集まり、高まっていく。その結果がこうしたツールにつながっているのでしょう。
土屋 じつは相当難しいこともできます。
たとえば自動発注のアルゴリズムをつくっているのですが、これもエクセルで全部行っています。
10年かけて完成を目指していますが、担当の5名はエクセルベースで、毎週1回、アルゴリズムを検証して微調整する会議をやっています。
入山 シミュレーションできる社員はどのくらいいるのですか?
土屋 10%ぐらいの社員はできます。
入山 10%とはすごい。年齢層はどれくらいですか?
土屋 若い人が多いです。エクセルの勉強会をスタートしたときに20代だった人たちが、8年経過していまは30代になっています。
ちなみに、社長の小濱もエクセルのヘビーユーザーです。
入山 間違いなくワークマンの特徴は「エクセル経営」です。
エクセルを自分でいじってデータ活用経営をやっている会社、ましてや全社員でやっている会社なんて聞いたことがないですよ!
土屋 データ活用力は仕事の能力の半分以上を占めています。
いまの営業部長(SV部長)は、前職は自動発注設定のチームのリーダーです。自動発注の設定をする人は、店舗の品揃えを一番よく知っている。アルゴリズムを変えられるので、その人が営業トップになりました。
入山 人事制度にも組み込まれているわけですね。続きはまた次回聞かせてください。
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。