男性不妊の中で、最も深刻なのが、原因不明の無精子症だ。射出精液の中に、1匹でも精子があれば顕微授精が可能だが、ゼロではそれもかなわず、かつては血のつながった子どもを諦めざるを得なかった。

 しかし、15年ほど前に「TESE(精巣内精子採取術)」という、精巣内から精子を回収する手術法が開発。回収率は4割程度と高くはないが、自分の子どもを持てるチャンスが生まれた。

 ただ、手術による精巣へのダメージが大きく、何度も行える手術ではない。また、染色体異常が関連した無精子症の場合、子どもが男の子だと、男性不妊がその子に受け継がれる可能性もあるため、そのリスクは留意しておきたい。

「股間は常にクールビズ」が合言葉
週に2回は射精するのが望ましい

 精子の状態は「生活習慣によっても改善する余地がある」と湯村准教授。

 まず、精巣はとにかく熱に弱いので、精巣がある股間周辺を温めてしまうファクターをなるべく取り除くことが重要だ。

 下着はブリーフよりも通気性の良いトランクスにする、長風呂やサウナは控える、ぜい肉が股間を圧迫して熱がこもりがちになるので肥満体形にならないよう注意するなど、精子のためには「股間は常にクールビズ」が合言葉といえよう。

 次に、精液をため過ぎると造精機能に悪影響を及ぼすので「週に2回は射精するのが望ましい」(湯村准教授)。

 また、喫煙は精子に悪影響であるほか、ED(勃起不全)の原因にもなるのでNGだ。不妊だけでなく自身の健康維持にも不可欠である上、妻が妊娠した場合、胎児への副流煙は絶対に避けなければならない。どうせ禁煙しなければならないのだから、今のうちにやめておいた方が身のためである。

 近年ではコエンザイムQ10、亜鉛、カルニチンなどの栄養素の摂取が良いという報告や、精子に悪影響を与えるとされる酸化ストレスとの関係を示すデータも出始めているという。

 多忙な日々を送るビジネスマンには難しい相談かもしれないが、十分な栄養と休息を取ることも忘れないようにしたい。

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