習近平の深セン訪問に見る、8年で露と消えた「改革の意思」
習近平総書記は深センで開かれた式典で深センの成長の軌跡をアピールした Photo:PIXTA

 習近平は改革派か保守派か――。

 中国の動向を見ている、気にしている関係者であれば、誰もが測ろうとした尺度に違いない。筆者自身は、この二項対立的な物差しで中国の最高指導者や為政者たちを議論することが、必ずしも正しい判断につながるとは考えていない。一方で、内政と外交という角度から見てみると、日本を含めた諸外国の観察者は、内政で改革に前向きな指導者は、外交でも国際協調を重んじるため国益の主張にも自制的になり、逆に、外交で強硬的、拡張的な指導者は、内政でも保守的になり、政治的な引き締めを強めると考える傾向にある。

 それはそれで一定の説得力を持つ。

 現に、昨今の最高指導者である習近平総書記(以下敬称略)は、内政は保守的であり、外交は強硬的である。逆に、「改革開放の総設計師」と称される鄧小平は、内政においては、国策の重点を階級闘争から経済成長へと大転換させ、統治体制の改革にも取り組もうとし、外交では米国や日本をはじめとした「西側主要国」との関係を安定的に管理しようとした。鄧小平にとって、国内改革と対外開放は表裏一体を形成するセットの関係であった。

“新時代”に突入した現在に至っても「発展途上国」を自称する中国にとって、経済成長や構造改革に裏打ちされた、人民が物質面、精神面双方において豊かになっていくプロセスには、平和な周辺環境と健全な対外関係、特に米国を中心とした大国との関係を安定させることが不可欠である。

 その意味で、本連載でも繰り返し扱っていきたように、内政で保守化(政治的引き締め強化、自由や人権への鎮圧)、外交で強硬化(主権、平等、民族尊厳、国家安全などを枕詞に核心的利益や海洋権益を拡張)する習近平政権の戦略や政策は、真に中国の国益に資するのか、中国の持続可能な発展と安定的な対外関係を保証する上で身の丈に合った適切なものなのか、国内外から疑問視されているというのが現状であろう。

習近平が深センで
語ったこと

 そんな習近平政権の現在地を検証する上で、注目に値すると筆者が考える動向が最近あった。

 先週、習近平が広東省深セン市を視察し、「深セン経済特区設立40周年」記念式典に出席、談話を発表した。香港に接する深センは、改革開放40年の歴史において、中国経済を独自の立場で牽引してきた。習近平は談話の中で、この40年で、深センのGDPは2.7億元から2.7兆元に(年平均成長率20.7%)、財政収入は1億元未満から9424億元に、貿易総額は0.18億ドルから4315億ドルに(年平均成長率26.1%)なったと、成長の軌跡を誇らしげに紹介した。

 談話の冒頭で、習近平は深センを経済特区に設定する経緯について次のように振り返った。

「経済特区を設立することは、党と国家が改革開放と社会主義現代化建設を推進するための偉大なる創造的事業である……1979年4月、広東省党委員会の責任者が中央の指導者に輸出加工区を設立し、改革開放を推進する提言を行った。鄧小平同志は明確に回答した。やはり特区と呼ぶのがいい、中央は政策を施すから、あなたがた自身で取り組み、道を切り開きなさい、と」