しゃぶしゃぶ「木曽路」の売り上げがV字回復している。コロナ禍の影響で、既存店売上高の前年同月比が4月は34%、5月は58%まで落ち込んだものの、8月は99%、9月は93%まで戻した。窮地挽回のため木曽路は大きな“賭け”をしていた。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
コロナ禍拡大で苦境の外食業界
木曽路の売り上げがV字回復
コロナショックで落ち込んだしゃぶしゃぶの木曽路の売上高がV字回復――。
新型コロナウイルスの感染拡大で外食業界が苦境に陥っているのは周知の通りだ。日本フードサービス協会のまとめによれば、外食業全体の8月の売上高は前年同月比で84%まで戻したものの、ディナーレストラン業態は依然として厳しく、同65%に留まった。
外食企業の決算では、「過去最大の赤字」「店舗の大量閉鎖」などが次々に発表されている。しゃぶしゃぶと日本料理店の大手チェーン「木曽路」も例外ではなかった。
木曽路が8月に発表した21年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期から55%減の45億円、営業損失が25億円となり、四半期決算では過去最大の赤字幅となった。
外食企業の“体温計”である既存店売上高の前年同月比について、木曽路も4月は34%、5月は58%と絶不調だった。ところが直近の8月は99%、9月は93%まで戻って来ているのだ。
9月の既存店売上高の前年同月比が90%を超えているのは、牛丼やハンバーガーといったファーストフード業態の企業が中心。持ち帰りが強いこうした企業は、4、5月の緊急事態宣言下でも既存店売上高の前年同月比が90%を超える外食の“勝ち組”だった。
一方、ディナーレストラン業態では、外出自粛や営業自粛などで一度客離れしてしまった後も、飲み会や会食自粛の影響を受け、客足が遠のいている。こうした中で売り上げをV字回復させた木曽路は“異色”の存在なのだ。
この業績急回復の裏で、木曽路はある“賭け”をしていた。