肉や魚が確保できなくなったらどうなる……。そんな将来に対する不安をテックの力で解決しようという動きが続々と起きている。日本でもブーム発火前夜となった「植物由来代替肉」と、場所を問わずどこでも養殖が可能な「閉鎖型陸上養殖」だ。特集『肉と魚の経済学』(全13回)の#11では、未来の肉、魚不足の解消の武器と目されるフードテックの最前線を追う。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
前年比6倍に急拡大!
ステイホームでようやく着火した代替肉市場
いわゆる米国の「西海岸フードテック銘柄」の代表格となった感のある、代替肉。2019年に米ナスダックに上場したビヨンドミート、ビル・ゲイツ氏が出資して話題になったインポッシブルバーガーなどを筆頭に、スタートアップマネーをがんがん引き込んでいる。ベジタリアンやヴィーガンなどをターゲットとして開発されたものの、ケンタッキーフライドチキン、タイソンフーズなど一般の外食や食肉の企業も取り扱い、スーパーの肉売り場に専門コーナーがあるほど市場に浸透している。
ところがこの波はすぐには日本に届かなかった。ここ数年かなりの数の企業が代替肉市場に参入していたものの市場として伸び悩み、ビヨンドミートですら、三井物産からの出資を受けて計画していた日本進出を中止したほどである。
そもそも、日本市場の事情は米国とは大きく異なる。ベジタリアン市場も欧米よりはるかに小さいため、各社はオリンピック開催を視野に入れたインバウンド需要を主なターゲットにしていた。そもそも豆腐や納豆など、大豆を日常的に食べる日本では、植物由来肉を使ったハンバーグはかなり昔から存在していたが、消費者の間で「あまりおいしいものではない」という評価がなされていた。
それが今年、大異変が起きた。