「◯歳向け」という考え方の呪い

てぃ 僕も似たような経験があって、YouTubeに動画をあげると必ず、「今日のお話は何歳児向けですか?」というコメントがつくんです。「うさぎになってごはんを食べよう」も、幼稚園児でもいいし、1歳でも3歳でも、たとえ高校生であっても、それでよろこんで食べるんだったら、それでいいじゃないですか、という話をするんですが、あまり納得してもらえないです。

坪田 うちの塾の話になりますが、うちは東大や慶応医学部などの大学受験を指導するので、学習観点からみるとめちゃくちゃ勉強のできる人が多いんです。で、その人たちと何かイベントやろうというときにいちばん盛り上がるのが100マス計算。あれってみんな小学生用と思っているけど、大人が競争してやってもめちゃくちゃ盛り上がる。

 大学受験では誰でもケアレスミスをするんですが、その対策として、「ストループ課題」というものをやることもあります。これは、書かれている言葉ではなく、その言葉を書いてある色を答えるという課題で、たとば「しろ」という字が赤で書かれていたら「あか」と答えます。これは一般的に幼児や高齢者の認知機能を訓練するためのテストと考えられているんですが、うちの塾では医学部受験生にやらせたりします。なぜなら、文字の認識と実際の色の認識を変えるという行為が、「自分の思い込みで書いてしまう」というケアレスミスを無くすためにとてもいいからです。

てぃ ちょうどこのあいだ、「頭も気持ちも切り替えの早い子になる方法」としてそのテストを動画で出しました(笑)。

坪田 そうですか。子どもだけでなく大人がやっても面白いですよね。

 あともうひとつ、この本の中で科学的にすばらしいと思ったのが、「子どもにおしたくをさせるために、大人が実況中継する」というもの。これはメタ認知ですね。

 メタ認知というのは、自分がどういう状況か客観的に見る力です。たとえば今、我々は椅子に座っていて、太ももの裏のところに体重がかかっていますよね。これ、ずっとかかっていたはずなのに、指摘されてやっと気づく。つまり、自分が認識しないと認知できないんです。このように、子どもがしていることを大人が実況中継することによって、今自分がこういう状況なんだなということを子どもが認識できる状態になり、メタ認知の育成をサポートする試みになるんですね。

てぃ 子どもが「自分でやった」感をもつように促すことが大事なんですよね。

坪田 自己肯定感も高まりますし、自分でチャレンジしようという気持ちになるし。大人は最低限のセイフティネットとして携わらせてもらう。これは子どもの成長を実感すると考えたときに、「子どもにそこまでおもねらないといけないのか」という発想と対極ですよね。

てぃ 勉強でもなんでもそうですけど、結局誰かにやらされているものって身にならない。自分でやっいると思わせることが大事ですよね。

医学部受験生も幼児も同じでOK!<br />試験でケアレスミスをなくし、<br />切り替えの早い子になるトレーニングとは?『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』坪田信貴(SB新書)
「人に迷惑をかけるな」「勉強しなさい」「やる気あるの?」。子育てをしていると、ついつい使ってしまう言葉ですが、実は心理学的に子どもにとって逆効果になっていることがあります。たとえば、「人に迷惑をかけるな」は海外で子育てには使われません。むしろ、「困っている人がいたら助けよう」という言葉のほうが強調されます。一方、「人に迷惑をかけるな」といわれると、自ら自粛してしまうように育ちます。だったら、どうしたらいいの?という疑問に、坪田先生が実例と心理学を用いて、グローバル時代・AI時代の子育てを解説します!