申し込み済み施設はまだ6軒
有益な事業を止めてはいけない

 去る9月、日本環境保健機構は群馬県伊香保温泉の「いかほ秀水園」を推進プログラム第1号として、初の研修を行った。プログラムを受講した施設には「借り上げ福祉避難所(宿泊施設避難所)推進施設認証」を付与し、 3年に一度の研修を受けることで防災意識及び災害避難所として運営できる技術を維持できる体制づくりを促していく。プログラムの実施には人手も時間もかかるが、現状では講師の数が足りていないため、地域防災支援協会と協力して、講師の募集と養成に力を入れる方針だ。

「実際に現地に赴き、責任者の方と打ち合わせを行った上で、オンラインによる管理者専門研修(3時間程度) と、全従業員を対象とする一般研修を実施した後、施設での開設・運営訓練(3時間程度)に臨みました。

 頭で理解していても難しいんだなと感じたのは、避難者への接し方です。ソーシャルディスタンスを保ちながらの迅速な対応が大事なのに、どうしても“お客様”としてのおもてなしが身についているので、丁寧な敬語でゆったりとした対応になってしまうんですね。それでは時間がかかり過ぎてしまいます。『検温してもよろしいでしょうか』なんてお尋ねしている場合ではないんですよね。それでは避難者への危機感も伝わらない。

 そこは切り替えが難しいと感じました」

 秀水園のスタッフからは、全員で意識を共有できるよい機会になったとの感想を得たという。

「ホテルや旅館を福祉避難所にする一番の利点は、環境衛生が保たれるということです。従来の避難所では、足腰の不自由な高齢者が、不衛生なトイレの床に手をついて用を足さざるを得ない状況も少なくありませんでした。それは絶対になくしたい」

 秀水園は1254分の1。全国にある借り上げ福祉避難所候補のうち、プログラムへの申し込みを済ませた施設はまだ6軒だけだ。コロナ禍とGoToトラベルへの対応に追われ、「それどころではないのだろう」と高尾さんは言う。

 今年はどうやら台風は上陸せず、これ以上の自然災害はないまま年を越せそうだが、巨大台風や津波など、大規模災害は必ずやってくる。早期に避難する人を増やすことと災害関連死を減らすことの両方に役立つ、借り上げ福祉避難所事業の推進を止めてはいけない。