原因疾患はさまざまあるが
あやしいのは運動不足

 医師の診断は正しかったようで、薬を止めると数日で頻繁なこむら返りは収まった。ただ、アキラさんがこむら返りになりやすいことは変わらないので、再診の時に改めて相談してみた。

「先生、私は前々からこむら返りになりやすいんです。何か悪い病気が関係しているようで心配なんですけど」

「確かに、筋肉がつる症状は、代謝系、脊髄系、血管系、甲状腺系、神経・筋肉系の病気によって引き起こされることもあります。代謝系の病気だと、糖尿病、腎・肝機能障害、脊髄系は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、血管系では脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などでもこむら返りを起こします。ですが、お勤め先の健診では特に異常は見つかっていないんですよね」

「はい」

「それでしたら、あなたの場合はやはり運動不足によるところが大きいのではないでしょうか。ふくらはぎなどの筋肉は過剰に伸ばしたり収縮させたりすると痛むので、それを防ぐために2つのセンサーが備わっています。伸びすぎを防ぐのが筋紡錘(きんぼうすい)、縮みすぎを防ぐのが腱紡錘(けんぼうすい)なのですが、筋紡錘も腱紡錘も使わないと働きが衰えます。そして、誤作動が起こりやすくなり、こむら返りが起きてしまいます。

 なので予防したいのなら、しっかり運動することですね。あとは水分補給も心掛けてください」

「ランニングとか水泳とか、エクササイズとかですか。筋トレもいいんでしょうか」

「いいえ、いきなり頑張るとかえって身体を痛めてしまいます。まずはウォーキングですね。私のお勧めはインターバル速歩です。これは早歩きとゆっくり歩きを交互に数分間ずつ行う運動です。速歩と歩行を繰り返し行い、速歩の分数を合わせて1日15分間以上行うことが推奨されています。

 インターバル速歩の前には、アキレス腱や太もも、股関節のストレッチを丁寧にやってくださいね。3分の速歩を5回でも、1分の速歩を15回でもかまいません。速歩の分数が1日合計で15分以上になればいいんです。週に4日以上行うのがお勧めですが、無理をせず少しずつ、続けることが大切です。

 こむら返りだけでなく、生活習慣病全般の予防にもなりますよ」

 アキラさんはその夜からインターバル速歩をはじめた。加えて就寝時にはベッドサイドに水と芍薬甘草湯を置き、つったら即飲めるよう準備している。

「漢方薬にも副作用があるとは知りませんでした。サプリとかね、身体によくない飲み合わせがあるというのは知っていたんですが。自己流はいけませんね。これから薬を買う時には、漢方薬でもちゃんとお医者さんか薬剤師さんに相談したいと思います」

※本稿は実際の事例・症例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため患者や家族などの個人名は伏せており、人物像や状況の変更などを施しています。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)