小口融資機能「ホワベイ」の街頭広告
上海市地下鉄駅、小口融資機能「ホワベイ」の街頭広告。「5億ユーザーに楽しい生活を」がキャッチコピー Photo:Barcroft Media/gettyimages

世界最大の資金調達が予定されていたアント・グループのIPOが突然の延期となった。背景にあるのはアント・グループと中国金融当局の暗闘だ。特に小口融資は実質的に無規制の消費者金融だとして当局は懸念している。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)

史上最大のIPOが延期に
マー氏の「口撃」で対立表面化

 5日に予定されていたバ蟻集団(アント・グループ、バ=むしへんに馬)のIPO(新規株式公開)が延期された。同社は中国EC(電子商取引)大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)の関連企業で、日本でもよく知られているモバイル決済アプリ「支付宝」(アリペイ)を保有している。実現すれば、345億ドル(約3兆6000億円)を調達する史上最大のIPOとなったはずだが、いったい何が問題となったのか?

 背景にあるのは長年続いてきたいたちごっこだ。規制の穴を突いて、新たなフィンテック(金融テクノロジー)サービスを作り上げようとするアント・グループと、新興金融企業にも規制を及ぼそうとする金融当局の対立がここにきて表面化している。

 アリババグループの創業者である馬雲(ジャック・マー)氏は10月24日、上海市で開催された第2回外灘金融サミットで、「バーゼル合意は老人クラブに似ている」「中国の金融当舗思想は深刻。この思想では今後30年間の世界の発展に必要な金融需要には応えられない」と発言した。「当舗」とは19世紀から20世紀前半の中国にあった、所有物を抵当に入れて金を貸す業種。日本の質店に類似した業態だ。マー氏は自己資本比率などの金融規制は、古くさい過去の発想だとこきおろしたのだ。

 一方の金融当局は2日にマー氏、アント・グループの井賢棟(エリック・ジン)董事長らを召喚し窓口指導を実施した。また同日付の経済紙「21世紀経済報道」で、中国銀行保険監督管理委員会消費者権益保護局の郭武平局長が、(アリペイの融資機能は)消費者金融と変わらないのに、適切な規制を受けていないとの批判を寄稿した。

 対立の焦点となっているのが、アリペイの小口融資機能だ。他の金融機関から資金を調達して消費者に貸し付けるモデルが、伝統的金融機関の利益を損ね、システマチックリスクにつながると金融当局は懸念している。