課長の問題点とノルマを課した衝撃の理由

 説明を聞き終えたD社労士は、今回の件でのB課長の行いについて、下記の問題点を指摘した。

<B課長の問題点>
(1)自爆営業の強要
B課長が部下に対して適正な売り上げノルマを課すこと自体は違法ではないが、A係長に対してノルマの達成を理由に商品の自己買い取りを強要する行為は労働基準法に違反する可能性がある。

(2)パワハラ
B課長が部下に取った以下の行為がパワハラに当たる可能性がある。
○ 顧客側の状況を勘案せず達成不可能なノルマを強要していた。
○ 毎日の朝礼や個別面談等で、部下の意見を聞いたり具体的な指示を与えたりせず、一方的に激しい叱責を繰り返し、また査定による給料の大幅減額をほのめかすことでノルマを達成するよう過度なプレッシャーをかけ、その結果自爆営業を行った部下が現れた。
○ A係長に対して毎日、就業時間後最低1時間、激しい叱責を続けていた。

(3)B課長が会社の方針に従わず、独自にノルマの設定を行い部下に強要していた行為は会社に対しての誠実労働義務違反となる。

 C社長はうなずきながら答えた。

「これはB課長に大いに反省してもらわないといけませんね。もしわが社が法律違反を犯すことになれば大変なことです」
「そうですね。しかし、どうしてB課長は独自に高いノルマを設定したのでしょうか?」
「私にもわかりませんが、その点も確認した上でB課長の処遇を検討します」

 その後C社長は、この件につき専務や部長を交えた会議を開き、B課長も参列させて意見を聞く機会を設けた。B課長は当初、聞き取り調査で話した内容と同じ主張を繰り返したが、C社長が会社方針と違うことを理由に不審な点を問いただすと、部下が過剰なノルマを達成することにより自身の成績を上げ、査定で給料を増やすことが目的だったことを白状した。

 さらにC社長はその理由にも厳しく追及し、「ギャンブルで負け、知人から借金をしていたのでその返済資金に充てたかった」ことがわかった。この事情を知ったC社長は激怒した。

 「自分の借金を間接的でも部下に借金させて返済しようとするとは何事だ。それなら自分で営業して稼いだ金で返済しろ!」
 
 そして検討の結果、就業規則の内容にのっとりB課長は管理職として不適格とし、降格の上、地方の営業所に異動となった。またA係長や他の課員がノルマ達成のために自腹で購入した商品については未使用の分は返品してもらい、購入にかかった費用は会社が全額返済することになった。

<参考>
○自爆営業とは
企業の売り上げの増大やノルマ達成を目的として、従業員が自己負担で自社の商品やサービスを購入する行為のこと。上記の目的以外、例えば従業員があくまでも自分の意思で自社物品やサービスを購入した場合は自爆営業ではない。
○労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
○労働基準法第24条1項
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。