米国の大統領選挙が終了した。コロナ禍、しかもトランプ共和党候補VSバイデン民主党候補という、米国の進路を左右し得る、有権者たちの祖国への思いが問われる対立構造における選挙は、歴史的だったといえるのではないか。
本稿を執筆している時点で、すでに全50州と首都ワシントンD.C.の結果が判明し、すでに勝利宣言をしているバイデン氏が獲得選挙人を300の大台に乗せた(過半数は270)。トランプ氏は「バイデン勝利」の要因を不正選挙だと主張、いまだ法廷闘争によって結果を覆す姿勢を公には崩していないが、それ自体は「次」を見据えたパフォーマンスだという見方もある。よほどのことが起こらない限りバイデン勝利は覆らないだろうし、トランプ陣営が何らかの形で敗北を認める日も遠くないかもしれない。
超大国・米国にとって
この4年間は何だったのか
歴史的選挙をこの目に焼き付けるべく、筆者も現地へと赴いた。コロナ禍で、各州間の自由な移動が制限されていたこともあり、ニューヨークとワシントンD.C.のみの滞在となった。両地域は民主党支持派が圧倒的多数を占めるため、選挙の全貌を捉えるという意味では偏りが生じるのは免れないが、それでも行ってよかったと思っている。
現地で最も切実に感じたのが、米国民が現状と未来に対して抱く危機感である。最近、米国は「分断」という言葉で修飾、やゆされることが多い。異なる人種、階層、政治的立場などにおける分断がかつてないほど深まっており、政治や経済にも直接影響する社会問題と化している。
それと同時に、政治がポピュリズム化し、為政者は大衆迎合的な発言を繰り返し、理性的な政策論議は影を潜めるようになった。選挙キャンペーン期間における両候補の公開討論にも、相手を個人攻撃することで有権者の支持を得ようというポピュリズム政治の特徴が如実に表れていた。