しかし、リーマンショックから約1年で、2ケタ成長軌道に復した中国には新たな魅力が生まれた。それは生産拠点としての魅力ではなく、急速に拡大する巨大市場としての魅力である。2005年以降の構造転換の中で賃金は急速に上昇し、低コスト賃金の魅力は後退した。その一方で、賃金の上昇は所得水準の上昇をもたらし、中国の消費者の購買力を急速に高めた。中国の魅力は工場から市場へと変わったのである。

(4)消費者の所得増大により日本企業の顧客層が急拡大

 中国では一般に、一人当たりGDPが1万ドルに達すると、その地域の消費者の高付加価値化志向に火がつくと言われる。そのあたりから日本企業の製品・サービスに対する評価も変化する。一人当たりGDPが数千ドルの地域では一般的に、「日本のものは質は良いが値段が高い」と言われて、消費者は買おうとしない。

 ところが、それが1万ドルに達すると、「日本のものはちょっと高いが質がいい」と言って買うようになる。中国の主要都市の中で一人当たりGDPが一番最初に1万ドルに達したのは、蘇州、無錫、深セン(センは土篇に川)の3都市で、2007年のことだった。その後2008年には上海、広州、2009年には北京、2010年には天津など、主要都市が続々と1万ドルクラブに仲間入りした。

 それとともに日本企業にとっての顧客層が急速に拡大し、中国の市場としての魅力はますます高まってきている。多くの日本企業はそこに注目し、2010年以降再び対中投資ブームが始まった。最近の景気減速にもかかわらず、その勢いには衰えが見られていない。