もちろん、素直な組み合わせで関係を見ても、弱いながらも統計的な相関関係がある。しかし、この相関関係は日本とアイスランドの存在から生まれている。図から日本とアイスランドを除外して見れば、相関関係がないと直感的に明らかだが、念のために決定係数(R2、説明変数〈人口増加率〉が被説明変数〈物価上昇率〉をどれほどよく説明しているかを示す係数。0から1の間を取り、1に近いほどよく説明していることになる)を計算しておくと0.0508となって相関関係は消える。

 日本のインフレ率がなぜ低いかといえば、日銀がデフレ的な金融政策を行ってきたからである。アイスランドは確かに高所得の先進国であるが、人口約35万の小国である。この脆弱な相関関係によって、人口減少がデフレの要因というべきではないだろう。

 2010年から18年まで同じ関係を描いてみると下図のようになる。相関関係はわずかだが強まり、統計的にもより確実となる。

 日本は2013年以降の大胆な金融緩和政策、QQEが功を奏してデフレからは脱却している。代わりにこの相関関係を生み出しているのはギリシャと同じくアイスランドである。ギリシャは、リーマンショック後の政策がうまくいかず、不況とデフレに陥った。不況で仕事がなくなった結果、人口が他のEU諸国に流出し人口が減少した(ギリシャの人口増加率は、2000‐10年は年0.3%だったが、2010‐18年ではマイナス0.5%となった)。

 つまり、不況でデフレとなり、不況で人口が減少したがゆえに、人口減少とデフレが同時に進行したのである。人口減少がデフレを生み出すという因果関係ではない。この図からギリシャとアイスランドを除外して決定係数(R2)を計算すると0.0543となり相関は消える。

 アイスランドについても解説しておくと、人口約35万の国ながら、リーマンショックまでは金融業が発展していた。しかし、2008年リーマンショックの後、銀行が債務不履行となり国家的な危機を迎え、自国通貨が暴落した。しかし、これが漁業やアルミニウムなどの輸出拡大をもたらし、景気が回復した。為替下落によりインフレ率も高まった。

 要するに、人口減少がデフレの原因だという議論は誤りである。日本がデフレから脱却したのは大胆な金融緩和によるものであり、アイスランドの物価上昇も為替下落がきっかけとなっている。