「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!仕事に効く「教養としての地理」
地理とは、農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。
地理なくして、経済を語ることはできません。
最新刊『経済は地理から学べ!』の著者、宮路秀作氏に語ってもらいます。
残念ながら、日本は資源小国
日本は土地も資源もない国といわれます。日本は地体構造上、鉄鉱石の産出はほとんど期待できません。これからも日本の領土において、それは変わらないでしょう。石油や石炭などの資源もまた、国内需要の多くを輸入でまかなっている資源小国です。
日本の国土面積は、世界197ヵ国中61位と、上位3分の1に入る比較的広い国なのですが、一般的には「日本は狭い国」と認識されているのではないでしょうか。
国土が広ければ、その分多くの鉱産資源が産出する可能性が高まりますが、残念ながら日本は資源小国です。
1582年、イエズス会のアレッサンドロ・ヴァリニャーノはフィリピン総督のフランシスコ・デ・サンデに、以下の内容の手紙を送っています。
「日本は、私がこれまで見てきた中で、最も国土が不毛かつ貧しい故、求めるべきものは何もない。しかし国民は非常に勇敢で、しかも絶えず軍事訓練を積んでいるため、征服が可能な国土ではない」
つまり、日本が資源小国であること、国民の戦闘力が高いことなどから植民地化は困難であろうということです。当時と今では事情が異なりますが、やはり資源小国だと思われていたようです。
日本の強さのポイントは
「教育水準」と「人口」
では、なぜ土地も資源もない日本が、経済大国になれたのか? 地理の視点から考えてみましょう。
その要因は教育水準の高さ、そして人口の多さです。
明治時代、日本は西洋諸国の優れた文化、学問を導入して発展していきます。しかし、導入するだけの「下地」があったことも考えなければなりません。
その下地を作ったのは、江戸時代の教育です。
江戸時代の教育水準の高さは、全国に存在した寺子屋の存在が大きいといわれます。江戸末期における識字率はすでに50%を超えていたともいわれています。海外からもたらされた書物が翻訳されると、多くの人たちに読まれました。さらに勤勉です。自分が納得するまで美を追求します。
日本は島国であり、ほとんど同一の民族だけで生活してきました。人口が多いことから、同じ業種でも多くの企業が存在しました。企業間競争は技術競争でもあります。この競争が、技術水準を押し上げました。
さらに技術水準を上げるためには、研究開発が必要不可欠です。高い技術水準を求めて、企業は高い学力を持った人材を欲しました。教育水準が高くなることで、技術水準もさらに押し上げられていきました。
そして、作られた工業製品は国内の人口に支えられて販売個数を増やしました。