冒頭で見取り図を示す
「マサチューセッツ工科大の講義スタイル」

 今や全米だけでなく、世界中から優秀な学生や研究者が集まるMIT(マサチューセッツ工科大)ですが、歴史の中で、この大学の評価を上げることになる契機として、講義スタイルの徹底があったと言われます。

 まず、講義の冒頭で、その講義の見取り図を示す。何を目的にどんなことをどんな流れで話すか、いわばマップを見せる。年間あるいは学期の講義スケジュールを「シラバス」(ラテン語で一覧表を意味します/オムニバスは多彩なものを集めたものです)として学生に配布することは、今では日本の大学でも当たり前になりました。逆に当たり前ではなかった時代があることのほうが驚きでしょう。

 このシラバスは大きな地図ですが、1回ごとの授業の地図も示すことがMITの講義スタイルです。

 しかも講義を終了させるに際し、その日の内容を総括する。あらためて何をテーマに、何を目的とした講義だったのかおさらいをする。大切なことは繰り返すのです(もちろん、「1回しか言わないからよく聞けよ」というのも聴衆を引き付ける一つの方法ではありますが)。

 これがMITスタイルだったのです。そうやって学生を伸ばす大学として評価され、ゆえに優れた学生が集まるようになり、ますます教育成果が上がり、というよいサイクルを醸成していったのですね。

(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)