「がんばったのに報われない理由」

 東京家庭裁判所が公表している「寄与分の主張を検討する皆様へ」というパンフレットには、認められる条件が次のように記されています。

(1)寄与行為が親族としての通常期待される以上であること
(2)介護に専念していたこと(仕事の傍らに通って介護していた場合は専念とはいえず、また、病院や施設に入所していた場合は、その期間の寄与分は認められません)
(3)介護を相当期間(少なくとも1年以上が目安)継続したこと
(4)報酬等を受け取っていないこと
(5)これらの主張の裏付けとなる証拠資料を提出すること

 これらを鑑みると、家庭裁判所から寄与分を認めてもらうためのハードルは、非常に高いことがわかります。

 また、家庭裁判所から寄与分が認められた場合、相続できる割合が変化すると思っている方が多いのですが、これも間違いです。

 先ほどの例でいえば、本来のA子の法定相続分は3分の1ですが、A子に寄与分が認められた場合、A子が2分の1にアップし、B子とC子がそれぞれ4分の1にダウンする。このような形で、法定相続分の割合が変化するというイメージです。

 実際は違います。寄与分が認められても、相続できる割合が変化するわけではなく、仮にプロのヘルパーに介護をお願いした場合に支払うはずだった金額をもとに、A子が介護に要した時間を乗じて、寄与分の金額を計算する方法等が採用されています。

 そのため、A子の寄与分の金額は、A子の期待に沿わない場合がほとんどです。

 法律上は介護の苦労の代償として寄与分という制度があるものの、「①認められるためのハードルが非常に高い、②認められても想像以上に寄与分の金額は小さい」というのが実態であり、実質的に介護の苦労は法律では救済されないと言えます。