生き方の転機には、
マッサージよりアフタヌーンティー

 ひとりで子どもを育てているNさんは、子供の教育費もかかるし将来どうなるかわからないから、と毎日切り詰めた生活だったそうです。節約し、堅実に生きていた彼女は、あるとき貯まったポイントの使いみちを探していて、雑誌でみかけたホテルのアフタヌーンティーを思い出したそう。

「ポイントが使えるなら、お金もそんなにかからないから」と、思い切ってアフタヌーンティーへ。優雅な空間でひとりお菓子を食べてみて「子供や将来のためにと毎日必死で、自分の楽しみなんて何年も忘れていた!」と衝撃を受けたそうです。

「自分のため」を取り戻した彼女は、もっと自由に働きたいと考え始め、休日も会社用携帯を手放せないストレスフルな仕事をやめて、フリーランスに。自分が笑顔でいられることを第一に、子供との時間を大切にした生き方へと変化しています。

 また、経営者のFさんは、仕事で成果を出し、クライアントや社員に信頼されるのが生きがい。自分のためにお金を使うという概念がなく、仕事用のスーツは買えても、プライベートの服を買うのはとにかく苦手。いっそ服を着なくていい生活をしたいと思っていたそうです。

 白い服は汚れるから、と避けていたのですが、あるとき白いズボンを買ってみたところ、気分がいい! 仕事のためではなく自分のためにおしゃれな服を買うようになり、髪型にもこだわって、毎朝きちっとセットするようになりました。

 物欲が出たことで、それまで穏やか一辺倒だった風貌にワイルドさが加わったFさん。いい意味でガツガツするようになり、仕事でも以前よりいっそう事業拡大に取り組んでいます。

「自分のため」はワガママとされやすい

 日本は「人のため」がよしとされ「自分のため」はワガママとされやすい風土です。「人のためばかりじゃ苦しいよ。自分のことも大切なんだよ」とは、なかなか教わりません。

 繊細さんは相手のニーズをキャッチする力が強く、良心的で、社会の規範を守ろうとします。そのため、ともすれば「人のため」ばかりになりやすいのです。

 私たちの本心は「誰かの役に立つか」「将来のために」「面倒ではないか」「生産性は」といった幾重ものベールで覆い隠されています。人生の要所で大胆に「自分のため」を投下することで、ベールが揺らぎます。

 成果や「人のため」に覆われ、遠い昔に見失った本来の自分が──自分が本当はなにに喜び、なにを大切にしたいのかが──ベールを剥がすように、少しずつみえてくるのです。

(本原稿は『今日も明日も「いいこと」がみつかる「繊細さん」の幸せリスト』武田友紀著の抜粋です)