コロナ禍の陰で進む官僚たちの規制改革「骨抜き」の実態と証拠Photo:JIJI

 最近は、政権のコロナ対応ばかりがメディアを賑わせていますが、菅政権の看板政策といえば規制改革です。

 規制改革というと、ちょっと前に行政手続きにおけるハンコ・紙・対面の廃止がメディアでも大きく取り上げられたので、規制改革は順調に進んでいるように見えるかもしれません。しかし、現実はだいぶ違う様相になりつつある気配が感じられます。

“初診からの遠隔診療”を否定する動き

 というのは、メディアで報道こそされませんが、いくつかの大事な規制改革が、規制を所管する省庁の官僚によって骨抜きにされつつあるからです。

 その典型例は遠隔診療です。これまで長年にわたって遠隔診療は原則として認められてきませんでしたが、コロナ禍における特例として、“初診からの遠隔診療”が閣議決定によって認められました。

 https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020/20200420_taisaku.pdf

 そして、政権としてコロナ後もそれを継続するという方針の下に、規制改革会議と厚労省の検討会の双方で、具体化に向けた検討が行われているのですが、どうも雲行きが怪しくなっています。

 厚労省の検討会の資料を見る限り、基本的にかかりつけ医のみについて遠隔医療を認めるという方向になりつつあるように見受けられるのです。

 https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000694436.pdf
 https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000694439.pdf

 しかし、かかりつけ医だけに限定して遠隔診療を認めるというのは、初診からの遠隔診療を原則不可にしようとしていることに他なりません。

 かかりつけ医とは、すでに日頃からお世話になっている医者だからです。かつ、私もそうであるように、都市圏に住んでいる高齢者以外の住民には、かかりつけ医などいない場合が多いのではないでしょうか。

 つまり、厚労省は政権の意向を無視し、コロナ後は“初診からの遠隔診療”は認めないという方向に、検討会を使って誘導しているとも言えます。感染者数の再拡大により検討はストップしているようですが、今後どう結論づけられるのか、注意深く見守っていく必要があります。