チェンジリーダーの哲学#70,日本ペイント,田中正明
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日本ペイントホールディングスが奇策に打って出た。筆頭株主であるシンガポールの塗料大手、ウットラムグループを引受先に約1兆3000億円の第三者割当増資を実施し、その対価としてウットラムが持つアジア事業を買収する。株式の希薄化は46%に達し、しかも、ウットラムの持ち分比率は58%に上昇する。「外資への身売り」との評まで出る中、目指すものは何なのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)

増資の目的はアジア事業の買収
日本発のグローバル企業への布石

――今回のディールの狙いを教えてください。

 ウットラムグループと日本ペイントは、60年前からアジアで協働してきた。2014年にはウットラムがわが社の株式39%を保有する一方、アジアの事業では、51%をわが社が、ウットラムが49%を持つ合弁事業の体制を取った。また、ウットラムが100%を持つインドネシアの事業もある。これをどのように一体化させるのかが、長年のテーマだった。

 今回のディールの最大のポイントは、アジアの合弁事業を日本ペイントが100%化すると同時に、ウットラムが持つインドネシア事業の買収だ。これにより、アジア全体の事業をわれわれが完全に掌握できるようになる。

 これまでは、例えば中国やインド、タイなどのいくつかの国では、自動車用塗料の事業を合弁事業でも日本ペイントでもやっている。色分けはしているが、重複する部分もあり、これが片方51%の持ち分で、もう片方が100%だとなかなか関係も明確にならず、整理統合ができなかった。それを戦略的に整理することが可能になる。

 日本ペイント本体のビジネスや、これまでに買収した豪州やトルコの事業なども全部100%の持ち分となっており、これからはさまざまな手が打ちやすくなる。

 日本経済は今後、人口も企業数も減る中で、塗料の需要も減少する。その半面、塗料事業の世界的な需要は必ず増える。グローバル化をさらに加速させて企業を成長させるという決断だ。

――しかし、ウットラムグループに対する第三者割当増資により、「日本ペイントは外資の子会社になった」などの評価も出ています。