Photo by Yoshinobu Bito

 小売店や飲食店が新規出店を計画しているときにとりわけ重要なのが、売上高がどのくらいになるかを予測することだ。売上高が予測を大きく下回れば赤字店となってしまう。つまり、正確な売上高予測ができるかどうかは多店舗展開を行う流通業の生命線である。

 しかしながら、日本では長らく正確な売上高予測は困難とされてきた。その常識を打ち破り、精度の高い売上高予測を実現したのがディー・アイ・コンサルタンツ。店長教育など出店に関する事業全般を手がけるコンサルティング会社である。

「顧客に赤字店を1店舗も出店させない」ことに情熱を注ぐ代表の長谷部和彦は業界のパイオニア。顧客が閉店に追い込まれるような赤字店を生み出してしまう確率は、業種にもよるが、通常わずか数パーセントだという。極めて数値が低いのは、高い精度での売上高予測ができているからだ。

 長谷部がコンサルティング業界に足を踏み入れたのは、高校卒業後に入社したダイエーグループで外食部門を担当したのがきっかけだった。

 当時、ダイエーは米国のハンバーガーショップである「ウェンディーズ」を日本に導入する準備を進めていた。長谷部は子供時代に初めてハンバーガーやシェイクを口にしたときの「うまい!」という感動が忘れられず、ウェンディーズを運営するウェンコ・ジャパンに入社した。

 着々と成績を上げて、複数の店舗を統括するスーパーバイザーに就任した。そこでも売上高、利益は常にトップクラス。わずか3年で27歳の若さながら課長職に就いた。当時は40歳前後で就任するのが平均であり、異例のスピード出世だった。

 しかし成績を上げるにつれて、不満が募るようになった。