2010年6月、地球へ帰還した小惑星探査機「はやぶさ」は、エンジントラブルや位置情報のロストなどの困難を乗り越え、真っ赤に燃えながらオーストラリアのウーメラ砂漠上空で燃え尽きた。その姿に心打たれた日本人は多かっただろう。12月6日に帰還する「はやぶさ2」も小惑星リュウグウの探査を終えて帰ってくる。はやぶさシリーズの裏には、NASAのまねはしないというJAXAの強い意志があった。(サイエンスライター 川口友万)
前回のはやぶさは
本番前の実験機
小惑星の探査計画がスタートしたのは1995年3月。小惑星サンプルリターン計画が、その後、はやぶさの打ち上げへとつながっていった。
小惑星サンプルリターンとは、それまでNASAが行っていた小惑星探査を一歩進めて、小惑星のサンプルを採取して地球へ帰還させるプロジェクトだ。これまで人類は月以外の天体のサンプルを地球へ持ち帰ったことはない。しかも地球から3億キロ離れた小惑星イトカワ(ちなみに地球と月の距離は約38万キロである)相手にやろうというのだ。これがいかにハードルの高い挑戦か、わかるだろう。
前回のはやぶさの成功を受けて、2014年12月3日に打ち上げられた『はやぶさ2』は、はやぶさの後継機ではない。実は前回のはやぶさは小惑星サンプルリターンの実験機で、本番での観測は、はやぶさ2で行われたのだ。