はやぶさ2が
生命の原料を持ち帰る?

 生命が地球に誕生した仕組みはいまだにわかっていない。生命のもととなるアミノ酸や核酸といったものが地球上でどのようにして生まれたのかさえも仮説の域を出ない。複雑な構造を持つ有機物は、原始の地球では生まれず、小惑星が地球に衝突してもたらされたのではないかと考える学者は多い。

 1970年にオーストラリアで採集されたマーチンソン隕石からアミノ酸が見つかり、その後も隕石からアミノ酸が見つかり続けていることから、すべてかどうかはともかく、地球のアミノ酸の一定量は隕石が運んできたという考えは誰も否定しない。

 隕石の元をたどれば小惑星だろうと考えられている。小惑星から分かれた隕石が地球に衝突したことがきっかけで有機物が揃い、生命の生まれる条件が整ったことになる。リュウグウから採取したサンプルにアミノ酸のような有機物が含まれていれば、小惑星が生命の原料を供給したことが確定する。

 はやぶさプロジェクトのもうひとつの意義は、小惑星の衝突から地球を守ることである。恐竜が絶滅したのは、ユカタン半島に落ちた直径10キロ(サイズには諸説あり、最大では80キロという説も)の隕石のせいだ。直径160キロのクレーターを作った隕石は、大量の粉塵を成層圏まで噴き上げ、火山灰に日光を遮られた地球は寒冷化、草木が枯れて恐竜は餓死した。

 はやぶさ2の誘導技術を使えば、地球へ向かってくる小惑星に人工衛星をぶつけ、地球からそれる軌道へはじき飛ばすこともできるだろう。

 太陽系には100万個もの小惑星があり、すべてが手つかずの資源である。はやぶさ2の成功を使い、こうした小惑星の資源開発ができれば、もし地球の資源がなくなっても安心だ。

 リュウグウには正体不明の黒い物質(高分子の有機物ではないかと推測されている)や水(土に微量の水が含まれていると推測されている)があるとされ、科学者たちはサンプルの回収を待ち望んでいる。はやぶさ2がどんな秘密をもって帰還するのか、とても楽しみである。