約100万円の損害賠償を求め
学会が天野氏を提訴

 それから約1年後の20年7月、学会から一通の通知書が届いた。天野氏のサイトが「『聖教新聞』の紙面や写真を無断で使用しているため、該当箇所の削除を求めるとともに、損害賠償として90万8000円を支払うように」という内容だった。

 そして、翌8月。サイトを管理するプロバイダーから「権利が侵害されたとの侵害情報や送信防止措置を講ずるようにとの申し出を受けた」との照会書が届いた。天野氏は指摘された箇所を削除したが、10月に東京地方裁判所から訴状が届いた。原告は学会だった。

「7月に通知書を送ったが素直に応じるどころか、逆に通知書を公開し、学会によるスラップ訴訟であり弾圧であるとSNSに繰り返し投稿した。全く反省する姿勢が見えない」という内容だった。

 確かに、聖教新聞の紙面や写真を無断で使用した点は指摘されても仕方がない。だが天野氏がサイトから聖教新聞の紙面や画像を削除したにもかかわらず、学会から提訴されるに至った。「学会に肯定的なサイトにも、許諾を得ていないと思われる紙面や写真が掲載されているが、そちらが訴えられたとは聞いたことがない」と複数の古参学会員たちは口をそろえる。天野氏が長らく学会に批判的な活動を行っていたことから、それに対する嫌がらせと受け止められても仕方がないだろう。

 ましてや、18年初頭にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の事務局長が来日した際、山口代表と原田会長はそれぞれに面談し、核兵器禁止条約に賛同、称賛するとおのおののホームページに掲載している。

 もっとも日本は核拡散防止条約は批准しているものの、17年に国連で採択された核兵器禁止条約には反対の立場を取っている。日本は米国の核抑止に依存する立場であり、おいそれと核兵器禁止条約に参加できるものではないが、学会員の中から「矛盾しているのではないか」という疑問の声が上がっている。

 例えば、10月28日に放送されたTBSラジオ。「森本毅郎スタンバイ!」で「最近のコロナ対策を巡る公明党に一言」で紹介された視聴者からのメールだ。

「集団的自衛権について公明党の反対に期待していましたが、残念ながら山口代表はあいまいな言い訳をしただけで賛成に回りました」「安倍政権に対する甘口の発言が顕著になった。権力維持にきゅうきゅうとしている」「聖教新聞ではいいことを言っているが、やっていることはめちゃくちゃです」

 無論、これらは届いたメールの一部であり、公明党を肯定する声も多々ある。だが、批判的なメールの中には上記の通り学会員と思われる声があるのも、また事実だ。

 今やこうした矛盾に対し、学会員たちの疑問が噴出している。そして、そこに追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。これまで学会の活動といえば、フェース・トゥ・フェースで対話することにより秩序や組織活動を保ってきた。その最たるものが座談会などの会合だったが、それがコロナ禍において途絶えてしまったのだ。

 学会員同士のつながりが希薄になれば、これまで抑えていた疑問や矛盾について深く考えるようになる。「座談会がなくなったことでしがらみがなくなり、むしろ頭がスッキリしてきた」と言うのは、ある大阪在住の現役学会幹部だ。

 これが表面化したのが、20年11月に行われた大阪都構想の是非について再び行われた住民投票だろう。詳細は、本特集#9『創価学会「婦人部」が公明党の右往左往に怒声!【危機(7)集票マシーン劣化】』に譲るが、大阪都構想に反対の立場から一転して賛成に回った大阪公明党に対し、出口調査では公明党支持層の過半数が反対に回った。直接訪問やF取り(友人・知人の選挙への勧誘)ができなかったことが、敗因の一つといえる。

学会のオンライン化の推進は
もろ刃の剣になりかねない

 加えて、コロナ禍による活動停止を受け、聖教新聞紙上で漫画などを活用してSNSやインターネットの利用方法を指南したり、オンライン座談会を行ったりするのも、こうした事態に拍車を掛けている。「幹部の話を動画で見ることができますが、聞きづらいです」といった学会員の声もある。

 これまで学会員はSNSはおろかインターネットに興味を示さないことが多かったというが、オンライン化の推進によってインターネットが身近になれば、いや応なしに学会や公明党に批判的なサイトやSNSに触れることになってしまう。

 学会がどう考えているかは分からないが、現場の学会員や地域の幹部クラスの中には、これを恐れている者も少なくない。今回の天野氏の件以外にも、「ここ数年、聖教新聞の紙面や写真を無断で使用したとして、法律事務所に呼び出される学会員が増えています」と複数の元学会員は言う。中には、学会から10万円ほどの支払いを求められ、金銭を支払った後にサイトを閉じ、その後は一切批判的な言動を行わなくなった元学会員もいるという。

 こうした行動によって、外から見れば、学会への批判に対して一定の抑止力が働いているように見えるため、「学会執行部による声の封じ込めではないか」という意見もある。

 この点を学会に問うと、「会員・非会員にかかわらず、重大な権利侵害には法にのっとり対処しております」との回答だった。

 本記事の配信日の翌日である12月18日午前、東京地方裁判所にて天野氏に起こされた訴訟の第一回口頭弁論が行われる。動向に注目しておきたい。

 いずれにせよコロナ禍によるオンライン化の推進は、学会にとってはもろ刃の剣。最強教団の意外なもろさが露呈したといえるだろう。