ニトリPhoto:Diamond

ライバルを大きく上回る買収価格を提示し、ホームセンターの島忠へのTOB(株式公開買い付け)で11月に同意を取り付けたニトリホールディングス。唐突にもみえた買収劇だが、似鳥昭雄会長自身や幹部の過去の人事と発言を丁寧にたどれば、今に至る伏線が見えてくる。国内外で成長を続ける異形の家具大手の戦略と、その真意を解説しよう。(流通ジャーナリスト 八神啓太)

ニトリHDの人事にあった島忠買収への伏線

「島忠さんの店舗は、ニトリの倍くらい売る力がある」――。ニトリホールディングス(HD)の似鳥昭雄会長は、11月13日に行われた経営統合の記者会見で島忠の店舗をこう評価した。小売ウオッチャーがこの言葉を聞いて思い浮かべるのは、2013年9月に「ニトリモール相模原」がオープンした際、当時は社長だった似鳥会長が報道陣に語った言葉である。

 ニトリHDは家具や家庭用品の店舗だけでなく、ショッピングセンター(SC)の「ニトリモール」を展開している。現在、大阪府東大阪市や神奈川県相模原市、宮崎市、大阪府枚方市にあり、相模原は2号店に当たる。

 似鳥会長はその際、「モール事業では、担当者が非常に頑張った。須藤の活躍がなければ、これほどのモールはできなかった」と述べ、当時、常務執行役員店舗開発部ゼネラルマネジャーだった須藤文弘氏を慰労。「かつて島忠の店舗を見て、良い場所に出店していると思った。誰がやっているのか調べたら、須藤が担当していた。そこで、須藤をニトリに招いた」と語っていたのだ。