総予測#29Photo by Masato Kato

ホテルや百貨店、不動産などの事業が鉄道事業の収入を上回る事業構造になっているのが私鉄の特徴。関東最大の私鉄である東急はその代表格だ。コロナ禍でJRが運輸収入の激減にあえぐ中、東急はインバウンドの落ち込みと観光の需要減少に足を引っ張られた。特集『総予測2021』(全79回)の#29では、非鉄道分野の巻き返し策について高橋和夫・東急社長に聞いた。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

「週刊ダイヤモンド」2020年12月26日・2021年1月2日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

建て直すべき優先事業は
痛みが大きいホテル、鉄道、百貨店

――2020年を振り返ると。

 過去に経験したことのないレベルの業績の落ち込みです。一般的に鉄道の利用が減ると事業としては厳しくなります。運輸収入は20年度末には従来の8割程度に戻り、1~2年したら9割くらいには戻るでしょう。それでも100%には戻らない。損益分岐点を下げて従来と同様の利益を確保できる構造に変えていくことが大事なので、すでに体質改善に着手しています。

――21年度から新たな中期経営計画の期間に入ります。

 2年連続営業赤字というわけにはいかないので、少なくとも黒字化することは必達です。先に事業を立て直すのは、一番傷んでいるホテル、鉄道、百貨店です。

 ホテルの状況はさまざまです。東京エリアの稼働率は3割くらいですが、地方では7割、リゾートでは9割稼働しているところもあります。

 主力の東京をしっかりしないといけないですが、全体で約40ある拠点は、コロナ禍が落ち着いてから再構築するのが一番いいと思っています。それまでは、外注していたものの内製化などで固定費を削減していきます。

――東急には鉄道の沿線に「衣食住のサービス」を提供する伝統的なビジネスモデルがありますが、鉄道の利用者数の減少で変革を迫られているのではないでしょうか。