首都圏の通勤需要と東北・北陸新幹線で巨大な運輸収入を稼いできた東日本旅客鉄道(JR東日本)に大試練が訪れている。コロナ禍での外出自粛や、リモートワークの浸透という新たな生活様式により、運輸収入が蒸発してしまったからだ。先細りする運輸事業をソフトランディングさせて、非鉄道分野のビジネスを拡大できるのか。特集『総予測2021』(全79回)の#28では、JR東日本の深澤祐二社長に21年以降に目指す会社像について聞いた。(ダイヤモンド編集部 松野友美)
振り返ればコロナ一色の1年
1500億円超のコスト削減を進める
――2020年を振り返ると。
コロナ一色で、どういう形で終息していくのかなかなか見通せない1年でした。9月に発表した見通しでは、年度末ごろには収入が8割程度に回復するとみていました。その後の様子を見ると、定期券以外の中長距離は想定を少し上振れていますが、定期券の戻りは遅いです。
感染状況により収入がブレるので、コスト削減を進めてきました。20年度は、(賞与の減額や修繕費の削減など)損益と投資の合計で1500億円を削減、年度末に向けてさらに上積みをします。
21年春には、終電の繰り上げやオフピーク時に定期券を利用するとポイントを付与する施策を始めて、鉄道サービスの見直しを図ります。
――鉄道会社の事業は、駅をビジネスの主軸として考える「駅ありき」のものが多いですが、利用者数の減少が避けられない中、駅の役割を変えていかなければならないのではないでしょうか。