同社は臨床試験への参加者を追跡する際、症状だけでなく、感染の有無を定期的に検査している。ワクチンによって無症状感染の割合が減った可能性があり、感染そのものの減少も示唆されている。ただし、これまで対象となった人数が少ないため、確かなことは最終的な結果を待つよりほかない。

未知その4:
効果は接種後どれくらいの期間続くのか?

 未知の要素4つ目は、「接種後にワクチンの効果は何カ月くらい持つか」ということだ。

 有効性として軒並み「9割超」という驚異の数字を、その後どれだけ長く維持できるのか。つまり、接種によって獲得した抗体価(感染防御に必要な中和抗体の血中レベル)がどのくらいの期間保たれるのかは、分かっていない。

 そこで、感染し回復した後に抗体価がどのくらいの期間維持されるか、世界からの報告を確認したい。

 最初の報告は6月、中国の重慶医科大学他が、新型コロナに感染し回復した人を退院2カ月後に調査した。すると有症状感染者37人中の62.2%、無症状感染者37人中の81.1%で、中和抗体が減っていたという。

 その後、10月に入ると中和抗体についての調査報告が次々に上がってきた。興味深いのは、英国と米国で図らずも結果がきれいに分かれたことだ。

 英ロンドン大学キングスカレッジ他の調査では、65人の感染者は、発症から約3週間は60%の人が強力な中和抗体を持っていたが、2カ月後には16.7%に減少。軽症患者では、抗体をまったく検出できなくなった人もいた。

 英国民36万5000人以上を対象としたインペリアル・カレッジ・ロンドンの調査では、6月の時点では6.0%の人の血中に新型コロナ抗体が確認されたが、9月には4.4%と、26.5%減少していた。特に75歳以上の高齢者では減少が顕著だった。

 他方、米マサチューセッツ総合病院などの研究チームが患者343人(多くは重症、入院93%)を調べたところ、IgG抗体は数カ月間持続し、75日時点で減少はほぼなかった。IgG抗体は中和抗体と強い関連が見られ、中和抗体もほぼ同じ推移を示すと考えられる。

 米マウントサイナイ医科大学のグループは、3~10月に採取された約3万人の感染者の血液を調査した。ほとんどが、少なくとも5カ月間は概ね安定的に強い抗体反応を示したという。結果は『Nature』と並ぶ世界的科学雑誌である『Science』に発表された。

 日本での調査もある。横浜市立大学などの研究チームが、実際に新型コロナに感染し回復した20~70代の計376人について調査した。その結果、新型コロナウイルスに対する抗体が半年後も98%(無症状や軽症では97%、中等症~重症では100%)維持されていたという。

 こうした研究から類推するに、ワクチンによって誘導された抗体もおそらく数カ月~半年程度は、十分な強さで保たれそうだ。そして徐々に弱まりながら、それでも長ければ1年近く維持できるかもしれない。

 不活化ワクチンの多く(破傷風や日本脳炎など)は、6~12カ月後に3回目の接種を必要とする。免疫が低下してきた時に追加接種をすると、免疫が非常に高まる=ブースト効果があるからだ。今回のワクチンでブースト接種が必要かどうかは、まだ分からない。ワクチン接種後に抗体価の観察を続け、どの時期からワクチン接種後の発病が増えるか、見極めていかねばならない。