第一生命稲垣精二社長12月22日の記者会見の壇上に立った稲垣精二社長(右) Photo by Yasuo Katatae

第一生命保険の元営業職員による19億円超の金銭詐取事件。今後の対応と再発防止策について、第一生命の稲垣精二社長が事件発覚後初めて記者会見を開き、説明した。そこで語られた内容は、創業者が掲げた理念とは程遠い呆れた実態だった。(ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男)

約19億円の詐欺事件
新たに3件の金銭搾取事件が発覚

「最大たるより最良たれ」――。

 日本で最初の相互会社、第一生命保険相互会社が誕生したのは1902(明治35)年のことだ。創業者の矢野恒太は「規模を追い求めるのではなく、お客さまや社会にとって『最良』であることこそが、生命保険事業の最大の価値である」と説いた。すなわち、顧客第一主義こそが、顧客や社会からの信頼を得ることにつながるということを、この言葉は表している。

 2017年春の第一生命入社式。新社長に就任したばかりの稲垣精二社長は、創業者の「最大たるより最良たれ」という言葉を引用し、1000人を超える新入社員たちに「お客さま第一主義」を説いた。

 だが、トップクラスの有績者である元営業職員が引き起こした19億円超に上る未曾有の詐欺事件。20年10月2日に公表してから2カ月以上が経過し、12月22日にようやく開かれた記者会見では、新たな3件の金銭搾取事件も発表される始末。創業から120年近くが経った今、第一生命にこの言葉が根ざしているとは到底思えない。そう感じざるを得ない会見内容だった。