「がんばらない技術」=「完全主義を手ばなす方法」最終回は、すばり、「マイナスの完全主義」の特徴とも言えるワーカホリズム、仕事依存についてです。まさにこの依存こそが、「気がつくと、いつも最後まで会社にいるあなた」に一番必要な「がんばらない技術」なのです。

やめられない、止まらないの心理状態

 マイナスの完全主義は、様々な精神的な問題のリスクになりやすいことが指摘されています。不安障害やうつ病、摂食障害といった精神の病気から、ワーカホリズム(仕事依存)、自らを傷つける自傷行為、なかなか抜け出せない疲れなど、いろいろです。
  なかでも、完全主義にいちばん縁がある精神科の病気として、強迫性障害があげられます。
「やめられない、止まらいない」ではないですが、たとえば、
「ドアの鍵をかけたか何度確認しても心配」
「手を何度洗っても、汚れているような感じがする」
  といった強迫観念が襲ってきます。

  鍵の確認、手洗いは、強迫観念の古典的なテーマです。自分には関係ないと思われるでしょうが、実は仕事や家事でもよくあることです。
  書類やパワーポイントを何度も見直してしまう、いざ提出しようとすると、強い不安を覚えてしまう。あなたにも経験はないでしょうか?

  余談ですが、重厚な作風の交響曲で知られるドイツの作曲家、アントン・ブルックナーは、強迫性障害で苦しんでいました。彼の交響曲には、初版、ハース版、ノヴァーク版など、いくつかのバージョンがあるのですが、完全主義者のブルックナーが、より完全を求めて、苦しみながら改良を重ねていたことが想像できます。

 アーティストなどクリエイティブな業種はもちろん、勤勉で仕事のできる人は大なり小なり「強迫性」を持っていることが少なくないのです。