組織論、モチベーション論こそ
隠れた大テーマ

御立:土屋さんは「社員が楽しく仕事し、結果的に本人も幸せで、会社も儲かる」という仕組みを必死でつくっていると思いました。社員の方々を大切にしています。
ワークマンの成功は、戦略面やオペレーション面から語られることが多いですが、組織論、モチベーション論こそが裏に隠れた大テーマだと思います。

土屋:私は外部の人よりも内部の人を大切にすべきだと思っています。
エクセル経営をやるときも、外部のデータサイエンティストには頼らず、内部の社員を教育しました。アウトドアに行ったときも内部の社員が成長するのを待ちました。

御立:人を育てている会社は、10年、20年の単位で稼ごうと思っています。
今年の業績だけを考えたら外部から社員を大量に入れ、派手なデザインをつくったほうが早く売上は立つのですが10年もちません。

土屋:やっぱり人だと思います。「ワークインライフ」で自分のやりたいことをワークマンでできれる人が多ければ多いほどいい仕事ができます。彼らが夢と興味を持ちながら、仕事をしてくれたからこそ、客層拡大という難しい仕事をやりきることができました。

(完)

御立尚資(みたち・たかし)
ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学より経営学修士(MBA with High Distinction, Baker Scholar)を取得。日本航空株式会社を経て、1993年BCG入社。2005年から2015年まで日本代表、2006年から2013年までBCGグローバル経営会議メンバーを務める。BCGでの現職の他、楽天株式会社、DMG森精機株式会社、東京海上ホールディングス株式会社、ユニ・チャーム株式会社などでの社外取締役、ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン専務理事、大原美術館理事、京都大学経営管理大学院にて特別教授なども務めている。経済同友会副代表幹事(2013-2016)。著書に、『戦略「脳」を鍛える~BCG流戦略発想の技術』(東洋経済新報社)、『経営思考の「補助線」』『変化の時代、変わる力』(以上、日本経済新聞出版社)、『ビジネスゲームセオリー:経営戦略をゲーム理論で考える』(共著、日本評論社)、『ジオエコノミクスの世紀 Gゼロ後の日本が生き残る道』(共著、日本経済新聞出版社)、『「ミライの兆し」の見つけ方』(日経BP)などがある。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。