在宅ワークの健康問題、仕事環境の整備をPhoto:PIXTA

 在宅ワークが「常態」になりそうな気配だ。

 米カリフォルニア大学のチームによれば、新たに在宅ワーカーとなった人の64%が新たに一つ以上の身体の健康問題を抱え、75%でメンタルヘルスが悪化したという。

 調査は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1波が米国を襲った昨年4月24日~6月11日にオンラインで行われた。回答者はパンデミックを機に在宅ワークに移行した988人で、平均年齢40.9歳、女性56.5%、男性32.1%、不明11.4%だった。

 また、4割以上が年収5~10万ドル(円換算でおよそ500~1000万円)未満で、5万ドル未満が19.0%、10~15万ドル未満が21.7%、15万ドル以上が18.8%などだった。職種はオフィス職が30%、エンジニア・建築が25%、教育関係が22%で、8割がパートナーと同居し、2割に少なくとも1人以上の扶養家族がいる。

 在宅ワーク前後で比較したところ、在宅ワーク後は同僚とのコミュニケーションが減り、逆にパソコンと向き合う時間がおよそ1.5時間増えた。また、上司や同僚との勤務時間の調整に手間取ったとする回答者は3分の1以上で、この回答者群は身体的・精神的健康の問題を抱える可能性がより高かった。

 このほか、女性は男性よりも抑うつ状態になりやすく、年収が10万ドル未満の女性は、男性や高年収のビジネスパーソンより健康問題を抱えやすいことが判明している。

 研究者は、在宅ワークでの心身の健康問題を回避する方法として「環境の整備」を挙げている。

 実際、調査結果でも、仕事部屋がある人は回答者の3人に1人にすぎず、多くはリビング兼用や他の家族がいる前で仕事をせざるを得ないようだ。

 どうしても仕事に集中できずイライラが募って生産性が落ちるほか、不健康な飲食や睡眠不足にも陥りがち。幼い子どもがいる女性は特にそうだろう。

 書斎の確保は難しいが、今年は一時しのぎではない専用デスクと快適な椅子、そして「仕事中、邪魔をしないで」のサインになる卓上照明を用意した方がよさそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)