ついに緊急事態宣言が再発令された。ビジネスエリートが激動の時代を生き抜くヒントを、世界情勢、宗教、哲学などに学ぶ月1回の特別講義シリーズの今回は、生誕から250年がたったベートーヴェンの生涯から、コロナ禍に苦しむ現在の我々への3つの示唆を読み取る。(神戸情報大学院大学教授/国際教養作家・ファシリテーター 山中俊之)
生誕250年、
ベートーヴェンは「真理探究の人」
ベートーヴェンを知ることは、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ現在の我々にとって大きな道標になるのではないかと思い、本稿のテーマを思い立った。
ベートーヴェンの生涯から、我々は現在の立ち位置を確認し、3つの示唆を読み取ることができる。
その前に断りを入れておくが、筆者は音楽の愛好家だが、音楽の専門家ではない。そのため本稿では、ベートーヴェンの言動やそこから読み取れる思想、社会状況などから現在の我々への示唆について述べることにしたい。
ゲーテやシラーなどの詩人、カントなどの哲学者、バッハ、ハイドン、モーツァルトなどの音楽家。こうしたドイツ語圏の先人たちの知的エキスを吸収し、音楽史上、大きな花を咲かせたのがベートーヴェンであった。
ベートーヴェンが生まれたのは、1770年12月である。ちょうど2020年12月がベートーヴェン生誕250年であった。コロナ禍がなければ全世界でベートーヴェンにちなんだコンサートが多数開催されたはずだ。
同じ時代を生きた世界史上の人物として、1769年8月生まれのフランス人、ナポレオン・ボナパルトがいる。後述するが、ナポレオンが歴史の表舞台に登場するきっかけとなったフランス革命は、ベートーヴェンに大きな影響を与えている。