それでも医療費は総額で減少傾向
2兆円の医療資源が未投入のまま

 厚労省「医療費の動向」によると、医療費が減少している(2020年8月が最新のデータ)。病院に行く人が減っているからだ。下図は、2017年以降の毎月の医療費の動向を示したものである。

 この図から、2017年に比べて18年、19年と増加しているのに、2020年は減少していることが分かる。トレンドとしての増加は、2018年9月の落ち込みにより、きれいなグラフとはならないが、9月の落ち込みと10月の反動増をならせば、トレンドとして増加していることが分かる。

 2020年の医療費は4月から減少し、5月には1割減少している。その後戻ったが4~8月までの合計は前年同期比で1兆円減となっている。しかも、医療費には増加トレンドがあり、19年は18年に比べて1兆円伸びている。さらに、これはコロナ対策に医療資源を動員している後での数字である。医師や看護師をコロナ対策に動員しているのだが、それでも2兆円分の医療資源が動員できていないということだ。

 コロナ以外の医療費が高すぎるのか、コロナに対処すべき医療費が安すぎるのか、どちらかである。医療費は厚労省が決めているが、彼らは、足元の医療費の水準が、医療資源を必要な分野に動かすのに十分なものであるか理解していないということだろう。

 日本の医療資源、特に病床数は世界的に見て格段に多い。また、集中治療室、医師、看護師の数は世界的に見て多いわけではないが、格段に少ないわけではない。

 一方、日本の新型コロナ感染者数、死亡者数は欧米先進国の10分の1以下である。常識で考えて、日本の医療が崩壊するはずはない。崩壊するのは、医療資源を必要なところにどう動員したらよいか分からないからであり、分からない中で何かをしなければならないことに気が付かなかったからである。