保険は貯蓄ではない。支払う保険料からは
経費や管理コスト、死亡コストが引かれている
一時払い終身保険は、その保険契約の対象である「被保険者」が死亡すると、500万円などあらかじめ決めた死亡保険金が契約している限りいつでも支払われるというもの。契約時に保険料をまとめて支払うので「一時払い」と呼ばれる。
貯蓄機能もあり、契約後、一定期間を経過すると、途中で解約しても払い込んだ保険料を上回る解約返戻金がもらえることもあるので、「10年たつと利息がついて定期預金よりおトク」といったセールストークが使われるようだ。
しかし、ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんは「終身保険はあくまでも保険。元本が保証された商品ではない」と注意を促す。
「終身保険に貯蓄性があるといっても、支払った保険料がすべて将来受け取る保険金のために運用されているわけではありません。契約者が支払った保険料からは、保険会社の経費や管理コスト、死亡コストが差し引かれています」
例えば、保険料を100万円払っても、全額が運用に回っているわけではない。預金金利が低迷する中、1%を超える生命保険の予定利率は魅力的に感じるが、前述のように生命保険ならではのコストがかかるため、元本割れ期間が数年続く。「予定利率だけ見ると預金よりおトクに感じるかもしれませんが、保険の仕組み上、契約してすぐに解約すると元本を下回るお金しか戻ってこないのです」(内藤さん)。
10年という期間を考えるなら個人向け国債など、もっと条件のよい商品もある。保険で貯蓄を考える前に、まずそういった商品を検討してみよう。
銀行窓口での加入審査は甘いぶん、
保険料が高くなることも
さらに、同じ一時払い終身保険でも、銀行の窓販商品は誰にでも売りやすくするために、本来なら加入前に行うべき医師の審査や健康状態の告知を簡素化しているものも。その結果、死亡リスク高めの人が加入する可能性もあるため、保険会社が直販するものに比べると最初から保険料が高く見積もられており、貯蓄性も薄くなる。健康であれば、銀行で加入すると保険会社で直接加入するよりも損をする可能性もあるのだ。
たとえ「銀行」で販売されていたとしても、一時払い終身保険は、あくまでも一生涯の死亡保障を目的とした保険商品だ。預貯金なら預金保険機構の制度で元本1000万円とその利息までは全額保護される。一方、保険会社が破綻した場合は生命保険契約者保護機構により、契約自体は補償されるが保険金などがカットされる可能性がある。また、破綻はなくとも金利が上昇すると相対的に不利になることもある。
こうしたリスクを知った上で、それに見合うリターンかどうかを考える必要がある。「死亡時に指定した受取人に確実に現金が残せるのか」という本来の目的に立ち返る必要があるだろう。
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