仮に成長率や収益性が変化しているのであれば、その背景は何なのかを考えるきっかけになります。景気の影響なのか、その企業の理由によるものかなどです。

投資のポイントは
経営者の利益へのこだわり

 もっとも、こうした行動はアナリストがする一般的な分析です。何か特別な行為というわけではありません。

 一方で、強調したいのは、定性的な要因の分析です。10年というのは、景気の山や谷や会社の事業の好不調が何回か含まれていてもおかしくない期間です。そうしたマクロやミクロ環境の中で、企業にとって好ましくない条件下でも当期純利益を維持し続けているのかどうかという利益計上へのこだわりや、景気が悪化した際の会社の対応力といった定性的な側面までが見えてきます。

 たとえば、どんな経済環境でも当期純利益が出ていることは注目に値します。これは一つに、経営者が赤字にしない努力をしたという証拠であり、株主であれば「ありがたい」というほかありません。

 また、競合企業が収益を悪化させて赤字であるような環境下でも、黒字を維持できているのは、経営者の努力以外に、ビジネスモデルという事業そのものに秘密があるとの仮説を立てて調査をすることもできます。

 そのような視点で過去を分析することで、短期的な決算書を分析するのとは違った視点を得られるのが長期間の決算分析のよいところです。

 こうした過去の分析は、企業が有事に直面した際に、「その企業に投資をしていて本当にいいのか(長期投資対象としての判定)」や「生き延びることができるのか(生存可能性の判定)」「よくない状況から他の企業と比べていち早く抜け出すことができるのか(競合企業比較の判定)」などを判定するのに役立ちます。

 また、過去の分析を通じて「過去にできたことは、将来もまたできるであろう」という再現性を期待させてくれるのと、「過去に一度もやったことがない経営陣よりも、やったことがある経営陣のほうが信用できる」という実現性への期待があります。

 期待は期待にすぎないという声もあるでしょう。しかし、過去を分析することで、企業が有事に直面したシーンが何度かあり、そこから立ち直った実績がある場合には、その企業の優位性を見いだすべきです。

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