化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスの創業家における巨額遺産を巡る裁判で、東京地裁は1月29日、鈴木郷史社長の指示による契約書偽造があった可能性が高いと判断。鈴木社長が保有する同社株4191万株は本来、遺産分割の対象だったとする判決を下した。「株の支配」に変化が起これば、現経営体制は崩壊しかねない。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
売買契約書「偽造の可能性が高い」と判決
確定後、社長保有株の遺産分割やり直しへ
化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の鈴木郷史社長が保有する同社株式(以下、HD株)のうち4191万株(1月29日終値で時価総額877億円)は、元をたどればグループ2代目社長が亡くなった後、鈴木社長が指示して有価証券売買契約書を偽造し入手していた可能性が高い――。
ポーラ・オルビスHD創業家の巨額遺産裁判で、東京地方裁判所(東京地裁、伊藤繁裁判長)は1月29日、被告の鈴木社長の指示によって上記の不正が行われた可能性が高いと判断。原告の鈴木千壽氏の訴えを全面的に認める判決を出した。千壽氏は、鈴木社長の叔父でグループ2代目社長を務めた常司氏(2000年死去)の妻である。
訴えは、鈴木社長保有のHD株4191万株が「本来、常司氏死亡後に親族間で分割されるべき遺産であった」ことの確認を求めるもの。仮に地裁判決が確定すれば、4191万株は法定相続のやり直しにより、その4分の3(3143万株、時価総額658億円)が千壽氏の手に渡る見込みだ。
4191万株は同社発行済株数(自己株式除く)の18.93%を占め、株式相続のやり直しと鈴木社長の不正濃厚認定は、「株の支配」に大きな変化をもたらす。遺産裁判によって、鈴木社長を中心とした現経営体制は崩壊しかねないのである。
では「株の支配」は具体的にどう変わり得るのか。判決の具体的な影響、今後の動きに迫ると共に、裁判に至るまでの創業家の確執と問題の構造を赤裸々に明かそう。