政府の総合経済対策のなかで、中小・零細企業への円滑な資金供給を打ち出す金融庁が、金融機関のいわゆる「5%ルール」を見直す方向で検討に入ったことが明らかになった。

 8月29日に決定した総合経済対策の事業規模は総額11兆7000億円。このうち中小企業向け金融対策として、9兆円を計上している。

 これを受け、金融庁は返済順位が低い代わりに金利を高めに設定、増資に近い「劣後ローン」を使った融資を推進させる方針だ。

 すでに、融資を促すよう金融機関向けの検査マニュアルを見直すほか、金融機関に対しても融資を要請する意向を固めている。

 しかし金融庁は、これだけでは効果が薄いと判断。そこで急浮上してきたのが5%ルールの見直しというわけだ。これは、金融機関が事業会社の持ち株比率の5%以上を原則的に保有してはならないというもので、銀行法と独占禁止法で禁じられている。

 これを、物価高や原油高の影響を受けている一部の企業に関して撤廃。金融機関が5%以上保有することを認め、企業が経営不振に陥っても、機動的に資金を供給できる仕組みをつくろうというのが狙いだ。

 関係者によれば、「金融庁はベンチャー企業や、再建できる可能性が高い中小企業を想定、すでに基準づくりに取りかかっている」。

 戦後、解体された財閥が、再度形成されないよう牽制する目的で導入されたということもあって、長年、金科玉条のように堅持されてきただけに、「金融庁の本気さがうかがえる」(金融関係者)。

 ただ、効果は未知数。当の金融機関側が冷ややかだからだ。

 「5%を超えていいと言われても、そうした案件はこれまで不良債権に分類しろと指摘されてきた水準のもので怖くて出せない」(大手行幹部)と警戒感を示す声も根強い。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)