まずは、この数字を見てほしい。下のような三つの集団があるとしよう。
(1)1000人中500人が真の感染者(有病率50%)
(2)1000人中100人が真の感染者(有病率10%)
(3)1000人中10人が真の感染者(有病率1%)
実は、この集団に対して、PCR検査を行うと、このようなバラツキのある結果となる。
(1)陽性適中率=98.59%、陰性適中率=76.74%
(2)陽性適中率=88.61%、陰性適中率=96.74%
(3)陽性適中率=41.42%、陰性適中率=99.69%
つまり、(3)では「本当は陽性ではないのに陽性の結果となる人が60%近くもいる」のだ。なぜ、このような事態になるのか、説明していこう。
大前提として、100%正しい結果を出せる、つまりは検査結果と実際の感染が100%一致する検査は、現状この世に存在しない。
感染してからの日数で検出できる体内の細菌やウイルス量が異なっていたり、検査の標的とは異なる物質に試薬などが反応してしまう場合があるためである。「技術的な問題なら改善すればいい」といっても仕方がない。
100%の正しい結果を出せない、ということは「陽性ではないのに陽性という結果になる偽陽性」と「陰性ではないのに陰性という結果になる偽陰性」が生じるということでもある。今、ちまたに溢れているPCR検査の論争は、この「偽陽性&偽陰性」が起こす「人道的観点&経済性」の問題を無視したものがほとんどだ。
検査能力を表す指標に「感度」「特異度」の二つがある。感度は、全員が特定の病気にかかっている集団を検査した場合、どのくらいの割合を陽性と判定できるかという能力を表したものである。特異度は、逆に全員が特定の病気にかかっていない集団に検査をした場合、どのくらいの割合を正しく陰性と判定できるか、だ。
コロナのPCR検査の能力はまだはっきりとした結論は出ていないが、各種論文によれば感度70%、特異度99%というのがある程度のコンセンサスになっている。