感染リスクを避けようと受診控えが顕著な昨今、この際だから自宅でできる「健康管理」のノウハウを身につけたい。
現代人に必須の健康管理項目は、「血圧」だ。日本高血圧学会発行の「高血圧治療ガイドライン2019」では、家庭で測る「家庭血圧」を重視し、高血圧を管理する際に、病院の診察室で測定した血圧値より家庭血圧値を指標とする治療を強く推奨している。
注意したいのは「診察室血圧」の高血圧の基準値は、140/90mmHg以上なのに対し、家庭血圧の基準値は、5mmHg低い135/85mmHgであること。家では余計な緊張がなく血圧も落ちついているためだ。数値の妥当性は国内の疫学研究で検証済み。
上腕式で家庭血圧を測る場合、カフ(腕に巻く帯)を巻く位置を左右の腕で比較してみると面白い。
一般に、血圧の測定値は右腕のほうが左腕よりわずかに高いことが知られている(例外はあるが)。「高い方の血圧」が本来の血圧値に近いので、測定の始めに左右を比較して「高い方」の上腕を毎日の定位置にするといいだろう。
実はこの左右差、高血圧患者や心血管疾患リスクが高いほど大きく、死亡リスクに関係していることがわかっている。
昨年末に英国から報告された5万3827人のデータをメタ解析した結果では、上の血圧値の左右差が5mmHg開くごとに全死亡リスクが5%上昇。心筋梗塞など心血管死リスクは6%上昇することが示された。
高血圧や糖尿病などの基礎疾患がない人でも、5mmHg以上の左右差で心血管疾患リスクが上がるため、研究者は「左右差が10mmHg以上ある場合は、高リスク群として対応すべき」としている。
異常な左右差は、血圧値が低い方の腕の動脈が詰まり、血流が滞ることで生じる。動脈硬化が進んでいる可能性が高いわけだ。放置すると大病のみならず、足や腕の末梢動脈が狭くなり、しびれや痛みで生活に支障を来しかねない。
自宅なら左右差の比較が簡単にできる。数カ月から半年間隔で、起床後と就寝前の血圧測定時に左右差チェックを入れてみよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)