「実戦」で経験を積まなければ、
練習の「質」は高まらない

 これは、あらゆることに通じます。

 例えば野球。僕は中学・高校時代に野球に熱中しましたが、バッティングを上達させるには、「量」をこなすことが絶対条件でした。

 まず、基礎練習の「量」です。素振り、ティー・バッティング、フリー・バッティグなどの基礎練習を延々と繰り返し行うのは単純で面白みはありませんが、これを一定量を超えて繰り返しやらない選手が上達することは100%ありません。野球の理論書をいくら読んだところで、基礎練習を通して身体で覚えなければ使い物にならないのです。

 ただし、練習ばかりしていてもうまくはなりません。

 何よりも重要なのは、実戦でバッターボックスに立つ「量」を増やすことです。

 練習と実戦は全然違います。実戦ではどうしたって緊張しますから、普段通りのスイングをすることすら難しいですし、相手投手は打たれないように本気でボールを投げ込んできますから、フリー・バッティングで打つボールとは「球質」がまったく異なります。

 それに、投手には一人ひとりクセがあります。同じストレートという球種を投げても、投手によって「球質」は全然違いますし、投球動作に入ってからボールがリリースされるまでのタイミングも、投手によって千差万別です。だから、投手に合わせて調整しなければ、ヒットを打つことはできません。当たり前のことですが、練習のようにうまく打てるはずがないのです。

 しかし、この「実戦経験」がきわめて重要です。

 なぜなら、実戦でさまざまな投手と対戦して、三振したり、凡打に終わったりする経験をするからこそ、「なぜ、打てなかったのか?」と考えることができるからです。

 例えば、投手のタイミングに上手に合わせられなかったのならば、バットを構えているときのタイミングの取り方を工夫すればいいと気づくでしょう。そして、そのような「課題意識」をもって基礎練習に取り組むことで、バッティングの技術は劇的に向上していくのです。