「本当の学び」が始まる瞬間とは?

 営業も同じです。

 とにかく、実戦経験の「量」をこなすことが、テクニックを磨くうえで最も重要なのです。

 僕も、プルデンシャル生命保険に入って最初の1ヵ月の研修期間は、営業マニュアルを読み込んだり、セールス・スクリプト(台本)のロールプレイングをしたり、提案書の作り方を学んだり「練習」に精を出しました。

 不精者の僕は、学生時代にノートをとったことはほとんどありませんでしたが、当時は、学んだことや気づいたことをびっしりとノートに書き込んでいました。それだけ真剣だったということですが、率直に言えば、そういう「練習」はたいして役には立ちませんでした。

 もちろん、それが無駄だったとは思いません。

 特に、プルデンシャル生命保険で受け継がれている営業マニュアルは、「営業」を科学的に解き明かしたきわめて優れたものです。それに、何度もロールプレイングを繰り返すことで、セールス・スクリプトを体で覚えたことも、僕の営業力のベースになってくれたと思います。

 だけど、しょせんは「理論」であり、しょせんは「練習」です。研修期間が過ぎて、実際に営業をして、さまざまなお客様と接するようになると、「理論」どおりに、「練習」どおりにはいかないということを、身をもってイヤと言うほど思い知らされます。

 そして、本当の「学び」は、そこから始まるのだと思います。

 さまざまなお客様と向き合い、さまざまなシチュエーションを経験して(さまざまな投手のさまざまな「球種」を経験するのと同じ)、数多くの失敗をすることによって、「なぜ、うまくいかなかったのか?」「どうすれば、うまくいくのか?」と振り返る。そして、自分の言動を細部にわたるまで反省して、修正を続けていく。そのプロセスによって、自分なりのノウハウ、テクニックが磨き上げられていくのです。

 つまり、ノウハウやテクニックを身につけたければ、とにかく「場数」を増やすべきだということです。だから、僕は常々、日中、社内でロールプレイングに精を出す営業マンを見かけると、「なぜ、そんなもったいないことをするのか?」と思っていました。

 もちろん、ロープレは非常に大切です。僕も、最初の1ヵ月は死に物狂いでやりました。だけど、ロープレを日中に行う必要はまったくありません。なぜなら、お客様が会ってくださるのは日中だけだからです。その貴重な時間を「練習」に費やすのは、あまりにももったいないではありませんか。

 野球で言えば、せっかく「試合に出ていいよ」と言ってくれているのに、「いや結構です」と言って、試合にも出ずに素振り練習をしているようなもの。「練習」するのはおおいに結構なのですが、それは「試合」が終わってからやればいいのです。

 成長に必要なのは「実戦経験」です。

 その「量」を最大化することが、テクニックを磨く最高の方法なのです。その意味で、断られまくっている営業マンのほうが、成績をあげるスピードが速いとも言えるのです。(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。