相続発生時における口座凍結のもう一つの理由は、「犯罪」防止である。法定相続人でもなく、また故人が遺言書で相続財産を遺贈すると指名した訳でもない人が、故人の口座から預貯金を引き出せば、それは違法行為だ。

 しかし、金融機関が勝手に口座凍結を行うことはない。誰かが国内で亡くなった場合、死亡を知った日から7日以内に役所や役場へ親族や同居者が死亡届を提出しなければならないが(国外で死亡の場合は3カ月以内)、役所から金融機関に知らされるということもない。死亡届は個人情報だからだ。

 では、なぜ、金融機関は名義人の死を知るのか。それは、遺族からの知らせによるものだ。故人の口座がある銀行に手続き方法を確認しようと電話したら、口座凍結されてしまったという例もある。「口は災いのもと」というが、ついうっかり喋ったでは済まない。家族も、親族も気をつけたいものである。

 それならば、口座名義人が死亡したことを金融機関に報告せずにいれば良いだろうと考える方もいるかもしれない。口座凍結されることもなく安心かというと、そういう訳にもいかないのである。

 平成30(2018)年に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金等活用法)が施行されている。この法により、平成21(2009)年1月1日以降の取引から10年以上、取引のない預金等は預金保険機構に移管されてしまう。そして、民間公益活動などを行う団体の資金として活用されることになっている。

 口座凍結が行われる金融機関は、銀行だけではない。信用金庫しかり、信用組合や協同組合に故人の口座がある場合もしかり。証券口座やFX口座も凍結される。近頃は、ネット銀行や暗号資産(仮想通貨/ビットマネー/電子マネー/ビットコイン/ビットキャッシュ/ビットフライヤー等)の利用者も増えているが、これらも口座凍結が行われる。

口座凍結されても焦るなかれ
仮払い制度と解除方法

 口座凍結されてしまうと、故人の預貯金などが引き出せず、医療費や葬式代も払えない事態になり得る。故人のキャッシュカードを家族が預かっていて、暗証番号を知っていれば、口座凍結前に一定額を下ろすことも可能だ。

 しかし、新型コロナなどが原因で名義人が急逝された場合、カードを預かったり、暗証番号を聞いたりする余裕はないだろう。そこで、平成30(2018)年、民法改正に伴う相続法制の見直しにより、「預貯金の払い戻し制度(仮払い制度)」が創設され、令和元(2019)年7月1日より施行されている。

 相続人は金融機関から、相続開始時の預貯金債権額×1/3×法定相続分の金額の範囲で(1金融機関につき上限額は150万円)預貯金の払い戻しができるようになった。他の相続人の同意や家庭裁判所の認可も不要だ。使途も問われない。ただし、金融機関に被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、預金の払い戻しを受ける相続人の実印と印鑑証明書などの書類の提出が必要となる。