『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の軸にあるのは、「ウィニングカルチャー」をどのように構築するかというテーマです。昨日掲載したバレーボール・JTマーヴェラスの2連覇達成の話(詳細は「バレーボール・JTマーヴェラスをVリーグ2連覇に導いた「立て直す力」」)に続き、本日は2021年2月20日、テニスの全豪オープン女子シングルスで、2年ぶりに2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手のウィニングカルチャーについて解説します。

全豪オープン優勝! 大坂なおみ選手を支えた「感情コントロール力」Photo:REUTERS/KELLY DEFINA

 2月20日、テニスの全豪オープン女子シングルスで、2年ぶりに2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手の快挙は、日本に明るいニュースを運んできてくれました。優勝後の彼女のインタビュー記事や報道記事などを読んでみると、優勝できた要因には「感情コントロールをうまくできたから」ということが挙げられるようです。

 スポーツ選手にとってもビジネスパーソンにとっても、自分の感情をコントロールすることは非常に難しく、同時に大事なポイントでもあります。

 昨日紹介したJTマーヴェラスの「立て直す力」というのも、揺れ動く感情をコントロールした結果でもありました(詳細は「バレーボール・JTマーヴェラスをVリーグ2連覇に導いた「立て直す力」」)。

 誰にとっても大切な感情のコントロール、あなたはできていますか。またそもそも、感情をコントロールするというのはどういうことなのでしょうか。

 実はこれが、意外と誤解されているのではないかと私は感じています。感情コントロールというと、湧いてくる感情を抑え込み、押し殺すことだと思っている人が多いようなのです。

 しかし、実際には感情をコントロールするにはまず、自然と湧いてきた感情をありのままに把握することからスタートすべきです。

 自分の感情を偽ることなく、素直に受け入れ、把握したうえで、それをどちらに向けていくのか冷静に考えて導いていくこと。それが感情コントロールです。

 大坂なおみ選手も過去の発言や書籍などを見てみると、これまでは精神的な浮き沈みが大きいタイプだったようです。

 精神的な浮き沈みが大きいことが悪いことだと捉えられがちですが、これも決して悪いわけではありません。浮き沈みが大きいということは、そもそも物事に対して抱く感情の量が大きいということ。感情をうまく導くことができれば、それを大きな力に変えることができます。

 人間は普段、1日に4万~5万の感情が芽生えると言われています。うれしいと思った瞬間、同時に不安がよぎったり、悔しいと感じる瞬間に一方では安心していたり……。矛盾する2つの感情を同時に抱えることも珍しくはありません。

 私自身、ラグビーの世界で監督をしていたときは、決戦前夜にすごく自信満々なのに不安がよぎったりすることもありました。自信があるだけではいい形で試合に望めません。自分を信じる力と自分を疑う力の両方が必要だったのです。

 感情コントロールとは自分の中に芽生えた感情をしっかりと捉えることです。感情を捉えたうえで、その感情がネガティブであろうがポジティブであろうが、これからどういう感情にもっていくと今の状況を打破できるのかと考え、感情を動かしていく力のことです。

 大坂なおみ選手はこれまで、うまくいかないことがあるとラケットを投げたりすることもありましたが、それが最近では減ったという話もあるようです。きっと自分の中で、ネガティブな感情を発散する方法が変わってきたのではないでしょうか。

 事実、彼女のコーチやトレーナーなども、大坂なおみ選手が精神的にオープンになったと語っていたそうです。以前は不安や怒りなどの感情を自分で抱え込もうとしていたそうですが、最近はそれをチームで共有できるようになったというのです。

 実際、今回の全豪オープン決勝戦の前にも、大坂なおみ選手は、緊張して不安だという気持ちをチームのメンバーにさらけ出し、対話を重ねて試合に臨んでいたそうです。だからこそ、優勝インタビューで「このトロフィーはあなたたちのものです」と仲間に感謝を述べたのでしょう。「チーム・ナオミ」には確実にウィニングカルチャーが醸成されていたのです。

 大切なのは、感情を押し殺したり自分の中に留めて無視したりするのではなく、湧いてきた感情をうまく取り扱うことです。

 自分の中で生まれた感情を素直に受け止め、悲しい時には悲しい、うれしい時にはうれしいと認め、その後は望む方向へと自分の感情を導いていくこと。さらにそれを一人で体現するのではなく、チーム全員でそのカルチャーをつくり出していくこと。人も組織も、素直に感情を受け止め、それを自分の望む方向へ導いていくこと。それが、ウィニングカルチャーへの第一歩なのではないでしょうか。

『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、ほかにも人や組織が自分らしくあるための方法をお伝えしています。ぜひご覧ください。

(本記事は、音声メディア「Voicy」の私のチャンネル「成長に繋がる問いかけコーチング」で2021年2月23日に配信した「感情のコントロール、できてますか?」を再構成して記事化しました)