シャドー(心の闇)が成長を促すこともある

加藤:組織文化を変革していくときはシャドーをリスペクトし、シャドーを多面的に見ることが重要です。シャドーが成長につながり、クリエイティビティの発揮につながるケースは少なくありません。芸術家は自分の抱えるシャドーがあるからこそ作品を生み出せることがあり、それはシャドーの肯定的な側面です。

 一方、シャドーが他者や社会を傷つける方向に働いている場合は、それを改善しなければなりません。シャドーには肯定的側面と否定的側面の二つがあり、両方を見てあげることが大切なのです。

中竹:私がよく言うのはシャドーをさらけ出せる関係性をつくるのが変革のスタートであるということです。ヴァルネラビリティ(弱さをさらけ出すこと)は、インテグラル理論にも出てくるのでしょうか。

加藤:自分の弱さをさらけ出すことは、発達段階とも関係していると思います。

 グリーン(多元的段階)とティール(統合的段階)にいる人は、オープンにすることでより多くの学びが得られることを体感として知っています。つまりグリーンやティールの段階になると、弱さをさらけ出すことは比較的容易です。

 しかしそれ以下の発達段階であるレッド(利己的段階)やアンバー(神話的段階)、オレンジ(合理的段階)では、弱さをさらけ出すことは難しいです。ただし、そうした段階でも他者からの支援や工夫があれば、彼らも弱さをさらけ出すことができるでしょう。

 それは先ほど紹介した発達段階ごとに響く言葉の話と原理は同じであり(詳細は「人に「刺さる」言葉を投げかけたいなら発達段階を見極めよう」)、大事なのはそれぞれの段階の強みや価値を理解し、それに基づいた対話や支援を行うことです。

 例えばオレンジなら、彼らは合理的な知性に強みがあるので、ロジックを通じて弱さをさらけ出す利点を説明し、論理立てて弱さをさらけ出す対話を実践してみるというのは一つの案です。

 アンバーであれば、まだ自律的な思考を働かせることは難しいので、チームのリーダーやファシリテーターなりが率先して弱さをさらけ出す手本を示してあげると、彼らはその方法に従って弱さを少しずつ開示していくことができるでしょう。

中竹:段階によってさらけ出す手法を変えていくのですね。

加藤:雰囲気づくりやさらけ出す方法を変えることで、弱さの開示が進む可能性は高いと思います。

 インテグラル理論や成人発達理論を学ぶと見えてくる観点は無数にあります。『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の理論やフレームワークと親和性の高いインテグラル理論や成人発達理論を使えば、組織文化の変革が進み、継続的に進化し続けることができ、その結果として強い組織の実現につながると思います。