“バカ”になったつもりで、
「型」どおりにやってみる

 これは、営業も全く同じです。
 営業の世界にも、先人が築き上げてきた「最も成功確率の高い方法」=「型」が存在しますから、“駆け出し”のときは、“バカ”になったつもりで、その「型」通りにやってみることが大事です。

 僕も、プルデンシャル生命保険に入って最初の1ヵ月間は、同社で推奨されているセールス・スクリプト(台本)を徹底的に練習しました。今でも、一字一句間違えずに言うことができますし、他のことを考えながらでもスラスラとそらんじることができます。

 というか、頭で考えながらセールス・スクリプトを話しているようではダメで、身体で覚え込んで自動再生できるくらいにならなければ使い物になりません。

 バッティングもそうですよね? スイングをするときに、一つ一つのアクションを考えながらやっているようでは絶対にボールは打てません。ボールが来たら、身体が自動的に反応できるようになるまで練習をやり込んで、はじめてボールを打ち返すことができるのです。

 営業でも、トーク内容をその場でいちいち考えているようでは、お客様の一挙手一投足からその真意を汲み取りながら、適切に対応していくことは不可能です。

 営業の現場で重要なのは、お客様が「何を大切に思っているか?」「何を不安に思っているか?」などを的確に掴み取って、臨機応変に対応していくことです。つまり、お客様に意識を集中しなければならないのです。

 そのためには、セールス・スクリプトの基本的な内容は、いちいち頭を使わずとも、自動的にスラスラ出てくるように訓練しておかなければならないのです。

まず「型」を身につけてから、
「型」を修正していく

 これができるようになって、はじめて「自分の頭で考える」ことが求められるようになります。
 というか、これができるようになっても、「自分の頭で考える」ことをせずに、ただただ、「型」通りにやっているようでは、営業マンとして成長していくことはできません。

 なぜなら、お客様は一人ひとり違うからです。「型」通りのトークをしても、その反応はまさに百人百様。お客様の個性や、お客様が置かれている状況に合わせて、アレンジを加えていく必要が生じます。そして、この部分は、「自分の頭で考える」ほかないのです。

 それに、さまざまなお客様に営業する「実戦経験」を積むうちに、「型」そのものを見直したほうがいいことに気づくことがあります。

 例えば、初歩的なことで言うと、僕が営業を始めた頃はテレアポが主流でしたから、僕もそれにならって電話をかけていましたが、しばらくしてから、ほぼすべてメールで連絡をするようにしました。
 なぜなら、お客様が電話に出るためには、いまやっていることを中断しなければなりませんし、対応するために時間も取られてしまうからです。電話は、お客様にとって迷惑なのです。それよりも、お客様の都合のよい時に対応できるメールで連絡をしたほうが望ましいに決まっているのです。

 もちろん、これだけではありません。
 テレアポをメールに切り替えたほかにも、さまざまなことを現状に合わせたり、お客様に合わせたり、自分に適したやり方に変えたりしていきました。

 ただし、それができたのは、僕が最初の段階で、業界で確立された「型」を徹底的にマスターしたからです。そして、その「型」をカスタマイズしていくことで、“自分流”のやり方を確立していったのです。