トップセールスマンがやっていることも、僕がやってきたことも、ようするに「困っている人がいたら傘を差し出す」、それだけのことだ。だから、難しく考える必要はない。困っている人に出会ったら、あるいは、お客様が困っていたら、そこで反応すればいい。

「何をしていいかわからない」からスタートする方法

 そうは言っても、まだ具体的に何をしたらいいかわからない……かもしれない。もしそうなら、「何をしたらいいかわからない」を出発点にすればいい。

 僕もそうだった。

 20代の僕は、本から学ぶことができなかったという話をした。本と対話して学ぶ、という頭の使い方を知らなかったからだ。

 それ以前に、僕は実社会でどうやって頭を使えばいいのか、仕事で頭を働かせるというのはどういうことなのか、がわかっていなかったのだと思う。だから、がんばって変わりたい、という意識はあったけれど、どうがんばればいいのかはわからない。

 具体的にどんな行動をするべきかがわからない。

 だったら自分を売るしかない、と思った。

「これができます」と言えるものがないなら、せめて自分を気に入ってもらえるようになろう、と思ったのだ。

 自分を売ると言っても、特別なスキルがあるわけでも、斬新なアイデアを持っているわけでもない。つまり、コンテンツは持っていない。だったら、相手が困っていることで役に立つしかない。

 困っている人は、こちらが何をすべきかを教えてくれるのだから。

頼られるというラッキー

 困っている人に傘を差し出そう、と言うととても立派な人みたいだ。

 でも、人に頼られるのが好きか……と問われると、別に好きではない。

 頼られて、あてにされて、それで期待に応えられなかったらどうしよう。そう考えると不安になってしまうからだ。それが怖い。

 それでも結局、僕が人の役に立つしかない、と思えたのは、やはり人見知りだからだ。人と付き合うのが苦手だったからだ。

 僕は、どうやったら人とニュートラルな関係を作れるのかがわからなかった。ニュートラルというのは、役に立つとか、助けるとか助けられるとかいうことではない関係。ようするにただ普通に友達になるということ。その普通のことが、僕にはできなかった。

 とはいえ、人が嫌いなわけではない。人と関わりたいし、人を大事にしたい。